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協同組合というビジネスモデル

少し前になりますが、国連は2012年を国際協同組合年 International Year of Cooperativesと定め、年間を通じて様々なキャンペーンが行われました。協同組合と聞けば、新鮮というより、むしろ古めかしを感じるこの老舗のビジネス形態になぜ国連が注目したのでしょう。


19世紀後半ヨーロッパ各地で産業化の進展に伴い、労働者層や貧困層の生活を維持するために生まれた様々な自助組織にルーツをもち、世界的に広がった協同組合は、現在の日本においては組合員だけでも6千万人を上回っており、世界的には数十億に達するといいます。途上国においても、過去50年間を通じて、協同組合がめざましく発展をとげてきました。今日、フェアートレード生産物の75パーセントは、協同組合が請け負っており、フェアートレードの興隆は、 途上国の協同組合の発達を意味するといってもいいほどです。
スイスでは、これらのフェアートレード商品を積極的に販売しているのも生協(生活協同組合)です。ミグロとコープという二大生協は、スイスの全小売業の売り上げ全体の約半分を占めており、二つ生協の組合員数は合わせて約450万人。組合や購買・消費行動を通して、生協の運営に大きな影響を与えており、フェアートレードは途上国とスイスの両者の協同組合の橋渡しで成り立っているといった感じです。ちなみに、スイスで扱われるフェアートレード商品の数は毎年増えており、現在食品から雑貨まで2200品目にのぼります。2014年のスイスのフェアートレード商品の売り上げは前年比7.5パーセント増の4億6700万フラン(1フランは約120円)で、一人当たりでは年間57フランをフェアートレード商品購入していることになります。

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また、スイスには世界的に有名なUBSとクレディスイスというメガバンクがありますが、それらに続くスイスで第三に大きい銀行は100年以上の歴史をもつ、やはり協同組合のライフアイゼンバンクという銀行です。顧客で同時に銀行の共同所有者である地域の組合員が監視する顧客重視の銀行形態のため、2008年の金融危機でもほとんど影響を受けませ んでした。というよりむしろ、打撃を受けないどころか、金融危機の多大な恩恵を受けたと言えます。他の銀行に不信感を持った10万人の新規顧客が殺到し、月々10億フラン(当時のレートで約879億円)の大金が銀行に流れ込み、同時に信用貸しの需要も減らずに、銀行の最高レベルの貸し出しを続けることができたといいます。以降も金融危機に強い銀行としての圧倒的な支持を得、現在の顧客数は370万人(スイスの全人口は約820万人)、 組合員数は180万人を抱えています。ちなみに、スイスの全協同組合数は9600で、スイスより10倍以上の人口を抱えるドイツの全協同組合数7500よりもはるかに多く、協同組合という形態が特に人気のある国のようです。

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フェアートレードを成り立たせている協同組合、金融危機に強い協同組合とくると、古めかしいだけの協同組合のイメージが変わってきます。実際、2008年 からの金融危機で一般企業が大きな打撃を受ける中、協同組合においては、金融危機の影響がほとんどなかったことが、国連で2012年を協同組合の年に設定した大きなきっかけだったようです。具体的にどんなことが協同組合という形態で注目されるのでしょうか。まず協同組合とは何かを改めて整理してみると、国際労働機関の協同組合専門家によれば、「人々が結集し、民主主義に基づき財産を築き、それを正当な方法で再分配する」ことであ り、「市場原理と社会的な取り組みを融合 し、連帯を参加者の中心に置くモデル」で あるとされます。具体的には、組合員は、共通の経済的、社会的、また文化的な目的のもとに組織化しており、利潤の最大化を至上課題とせず、投資額に関係なく一人一票の議決権を持ち、民主的な形態で運営方針を決めていくことなどが、普通の企業形態と大きく異なる特徴です。 再びスイスの例になりますが、ミグロ、コープでは、社会、環境活動や途上国援助、ライフアイゼンバンクも国内の文化、芸術活動の助成など、様々な社会貢献でも広く知られています。

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国連は、このような組合員による民主主義 に基礎を置き、利潤追求だけでなく社会的、倫理的な価値を重視する運営形態に、大きな可能性を見ており、同時に、ここにあげたスイスの例にもみられるように、協同組合という形態が、理想像や未来のビジョンとしてではなく、先進国、途上国どちらにおいても、現在実現そして成功可能なビジネスモデルであることを重視しました。協同組合のビジネスモデルとしての実績 は、雇用数も物語っています。スイスにおいて、国内最大の小売り業務を行う二大生協は、スイス最大の雇用主であり、世界規模でみると約1億人が協同組合で就労していると言われま す。国際労働機関によると、 世界的に多国籍企業が雇用する場合より、 協同組合が組織され雇用する場合の方が、20パーセント雇用が増えるとされます。

とはいえ、現在のグローバルな経済環境において、地域でうまく機能する協同組合が、常に安定した雇用を確保し、社会的な理念を反映させていくことは並大抵のことではありません。 特にユーロ安、スイスフラン高がつづく現在、スイスから国境を超えた隣国への買い物に歯止めがかかりません。ユーロ圏から進出してくる安価が売りの大手スーパーとの競争も熾烈です。
ただし、あるいはこんな事態だからこそ、 もしかしたら協同組合という組織形態が大きな威力を発揮するのかもしれません。協同組合ができた当初、様々な軋轢や葛藤があったように、 今後も協同組合は、 常に時代の状況に応じて変化しながら、組合員と共に、共存共栄の可能性を模索していくことでしょう。


<参考図書、サイト>
国連協同組合年のサイト(英語)
http://social.un.org/coopsyear/

http://www.ica.coop/activities/iyc/2japan.coop/outline/index.html

2014年のスイスのフェアートレードの実績報告書(ドイツ語)

アルフレート・ヘスラー著山下肇、山下万里訳『ミグロの冒険』岩波書店、1996年

スイスの協同組合についての記事(ドイツ語)

国際労働機関 International Labour Organisation(英語)




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