ジャーナリズムを救えるか?ヨーロッパ発オンライン・デジタル・キオスクの試み - 一般社団法人 日本ネット輸出入協会

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ジャーナリズムを救えるか?ヨーロッパ発オンライン・デジタル・キオスクの試み

社会のオンライン化が進む中、日本同様、スイスを含むドイツ語圏でも、紙媒体の書籍や新聞離れが急速に進んでいます。 これに伴って、新聞社や出版社各社は、オンライン紙面の有料化やウェッブの広告など、新たなツールでの収益化を模索してきました。その結果、オンライン版の新聞や雑誌の購読者数は年々増加し、世界的に名高いスイスの日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)も、オンライン版の購読が全体の1割を占めるまで成長してきています。しかし、グーグルとフェイスブックの広告収入が年々増加するのに対し、メディア産業の広告収入は減少傾向にあり、 紙媒体のメディアの減益分を取り戻すような状況にはいたっていません。

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先行きがみえないこのようなメディアをとりまく状況下で、新しいメディア・サービスがドイツ語圏で今年の9月中旬からでスタートしました。オランダで2013年からはじまったブレンドル Blendleというもので、簡単に言えば、複数の新聞や雑誌を手にとってパラパラめくって、気に入ったものだけ購入できる 駅前や街角のキオスク(売店)のオンライン・デジタル版です。最初に簡単な登録手続きを済ませると、 ドイツ語圏やほかの欧米の有力な新聞や雑誌100誌の表紙や記事の見出しと冒頭の数行を、一覧することができます。
さらに既存のキオスクにもない、デジタル・キオスクならではの画期的なサービスがいくつもあります。 まず、雑誌や新聞を丸ごと買わずに、気に入った記事があれば、その記事だけを買うことができます。また、数ある記事から自分におもしろそうなものを探すのが面倒という人には、自分が気になるテーマを選択すれば、その分野について専門の編集委員が選んだおすすめの記事を ウェッブで一覧したり、毎日メール配信してもらうことができます。おすすめの記事には、日本の本屋さんでよくみかけるポップのように、 編集委員のまとめや紹介の文章もつけられていて、購入前に内容を客観的に判断するのに役立てることができます。そして極めつけは、記事を購読したあとも、気に入らなかったら、全額返金してもらうというサービスです。これらの従来の紙媒体のメディアにはない柔軟・多様なサービスで、潜在的読者にジャーナリズムの質の高い内容が身近になることが期待されています 。

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このオンライン・デジタル・キオスク・サービスはオランダで始まって1年半の間で、購読会員が30万人まで増加し、 メディアも充実し、今年の6月までにオランダで発行されているメディアの90%を扱うまでに急成長しました。
購入はプリペード方式で10ユーロや50ユーロをあらかじめ支払う必要がありますが、新規登録者には 2ユーロ50セント分のクーポンが提供されるので、最初はそれを使ってサービスを試してみることができます。記事の購読料は長さや質によって多少異なりますが、一記事だいたい15セントから1ユーロの値段で、利用者は月に平均10〜15記事を購入しているそうです。収益は30パーセントがブレンドル、残りをメディアの発行元がとるということになっています。
気になる返金率ですが、会社側の説明では、返金できるサービスがあってもこれまで、返金を求める人の割合は少ないそうです。スイスのあるアンケート調査で、90%以上の人が、良質なメディアのコンテンツを得るために支払う用意があると回答したとのことですが、人々はオンライ ン・メディアの情報に対価を払うこと自体を躊躇しているのではなく、むしろデジタル時代に適応して効率よく良質の情報を購入する仕組みが、これまだ確立されていなかった、ということが、これまでの最大の問題だったのかもしれません。
今後、ジャーナリズムの仕事が適切に評価され対価が払われる「ジャーナリズムのiTunes」とも言えるようなこのようなしくみが、 軌道にのることになれば、良質の記事を生産するジャーナリストたちの手堅い経営基盤ともなりうるでしょうし、個々の記事をデジタルな地平で競争化させるという意味では、ジャーナリズムを今後さらに活気づけることになることにもなるかもしれません。

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ドイツ語版キオスクについても、出版業界での期待は概ね高いようで、ドイツ大手出版社2社は昨年ブレ ンドルへ300万ユーロの投資も行っており、スタート時点から有力な日刊紙や雑誌を含む37誌がすでにオンライン・キオスクに並んでいます。サイトの登録者数は、オランダの創業時点からの総計で50万人に達しました。

一方、登録人数よりもある意味でもっと、注目されるのが、利用者の年代です。これまでの利用者の半分以上が、35歳以下という若い世代で、これまで紙を媒体にしていたニュース・メディアが読者としてほとんど獲得できなかった世代です。若者世代と大手出版社や新聞社がこのサービスを通じてつながったのだとすれば、これまで若者の間で圧倒的な優位を誇っていたSNSやほかのオンライン・メディアと、競合するためのスタートラインに、やっと大手メディア各社が立てたということなのかもしれません。

スタートから日が浅く、今はまだ試験的な段階ですが、もしかしたら行き詰まったドイツ語圏のジャーナリズム界における力強い突破口になるのかもしれません。


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参考ウェッブサイト

Belndle, 100 Seconden Wissenschaft. In: SRF Radio 2 Kultur, 26. 10. 2015.

Auflagezahlen der Schweizer Presse Vormarsch der elektronischen Zeitung. In: Neue Zürcher Zeitung 1.10.2014.

Online-Zeitungskiosk Blendle startet in Deutschland. von Kurt Sagatz. In: Tagesspiegel, 6. 9. 2015.

Der digitale Kiosk zieht seine Rollläden hoch. In: Die Welt, Kultur, 14. 9. 2015.

NZZ-Artikel neu im Onlinekiosk von Blendle erhältlich. In: NZZ Mediengruppe, 11.9.2015.

Die Furcht vor den Riesen spaltet die Verleger. Medienkongress 2015. von Patrick Gasser in: Jungfrau Zeitung, 12. 9. 2015

Fabian Vogt, Blendle: «iTunes für den Journalismus» in der Schweiz gestartet. In: Computerworld.ch News, 14. 9. 2015



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