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スイス人のショッピング・ ツーリズム

ドイツの南西ボーデン湖にほとりに、コンスタンツという中世の町並みを残す小都市があります。今年の4月1日エイプリルフールの日、スイス国営ラジオ放送では、この小さな町がスイスに統合された、というニュース が、コンスタンツ市長へのインタビューなどもふまえて、まことしやかに流れました。こんなジョークが出てくる背景には、この町とスイスとの並々ならない関係があります。

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コンスタンツは、スイス側の隣町クロイツリンゲンと連なって発展してきた町であり、中世にはスイスへの帰属を自らスイスに願い出たりもしました。しかし、スイスのカトリックの州が、プロテスタント勢力が強いコンスタンツの編入に反対したため、願いは受け入れられず、結局 ハプスブルク家、そしてドイツ建国後はドイツ、バー デン・ビュルテンベルク州に帰属することとなり、今に至っています。しかしその後もスイスとの国境を接する地理的な位置が、その後も町に決定的な影響や恩恵をもたらしてきました。特に大きかったのは第 二次世界大戦末期の戦時下で、多くのドイツの都市が空襲で多大な被害を受けた中、隣町とほとんど境がなく発展していたコンスタンツは、連合軍が中立国スイスの町を誤爆することを恐れたため、空襲を受けずに残りました。

そして現在、スイスという隣国のおかげで 、空前の好景気にみまわれています 。強いスイ スフランのおかげで、 ショッピングセンターが軒を並べるコンスタンツに大勢の買い物客が、押しかけているのです。特に今年はじめの 1月15日、スイス国立 銀行が対ユーロの上限を突然撤廃したためにスイスフランが急騰する、いわゆるスイスフラン・ショックが起きて、スイス人の国境を越えたショッピングにさらに拍車がかかっています。

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人口8万3千人の都市は、スイスでもないのにスイス人であふれかえり、特に週末には、ショッピングセンターへ向かうスイス車両の渋滞で、 深 刻な交通麻痺が引き起こされるほどです。コンスタンツを中心に、スイスと国境を接する税関には150人が勤務し、日夜免税書類の発行手続きに携わっています。(ちなみに、2014年一年間でドイツが発行した 全免税書類数は1600万通にのぼりました。)サービス業就労者が全就労者の8割を占めるコンスタンツの労働市場で、2015年7月の市内とその周辺地域の失業率が3−4%にとどまり、ドイツ全体の平均6--7%をはるかに下回っているのも、コンスタンツの小売業界の好景気を物語っています。

このような「ショッピング・ツーリズム」とスイスでよばれている国境周辺のショッピングの実態を把握するため、今年、ザンクトガレン大学がショッピング・ツーリズムをするスイス人3000人を対象に食品、健康・美容商品、服飾、スポーツ用品、家具・インテリアの5分野に分けてアンケート調査を実施しました。この調査による と、購買する人が最も多かった商品分野は食品で、1年間で国外に買い出しにいく回数は平均8.5回、一回の支出は平均155 スイスフランです。次に多かったのは、健康・美容商品で、年に5.4回海外で購入し、一回の支出額は81スイスフランでした。そして 2015年1年間に外国で購入される総額は推計で、全5分野で約90億スイスフラン、他の分野の商品を含めた全体では、昨年より10億フラン多い110億スイスフランにのぼるとされます。
調査の結果で、スイス人自身が特に驚いたのは、ショッピング・ツーリズムは、国境周辺に在住するスイス人だけでなく、中央スイスの人々にも浸透していることでした。中央スイスの居住者は、この5分野の必需品の30パーセント以上を海外から調達していると回答しています。買い出しにはほとんどの人が車を利用し、平均して片道1時間、50キロの道のりを移動しています 。

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無論、国境まででかけなくても外国の安価な商品を手にいれるのに、インターネットの通販やディスカウントショップなどの選択肢もあります。しかしスイス国内に輸入する際の免税額(商品によって異なりますが郵送料も含めて65フランが上限である場合が多い)に比べて、自ら海外で買った品物の免税金額がはるかに高い(300フラン)こともあり、国境への買い出しの人気は変わりません。特に食品類を通販で買う習慣はほとんどな いため、消耗品である食品類の買い出しに定期的に海外にいくのが恒例化しているようです。

10年前からスイスに進出しはじめたドイツ系のディスカウントショップも、国境までの買い出しが普及している消費者にとっては、割安感は薄いようで、二大ディスカウントショップ両者の前年の全売上額は、今年のショッピング・ツーリズムの推定総額のわずか4分の1を占めるにとどまっています。

今年の物価比較調査では、クリームやローションなどスキンケア商品は、スイスはドイツに比べて7割、服は4割も割高という結果がでており、さらにドイツの19%の付加価値税(日本の消費税 に相当)が一人当たり300スイスフラン以内の買い物であれば、スイス人には免税となることも考えると、地続きで気軽な国外へのショッピング・ツーリズムは、もはや国内市場と争うものではなく、避けて通れない購買パターンの一つとして定着しても無理がないように思いま す。
一方、長期的な自国の雇用確保や環境保護などの観点を意識し、個々の消費者 がそれぞれ国内と国外の購買の種類と量に配慮していかなければ、巨大なヨーロッパEU市場に 囲まれた小国スイスの多種の産業・小売り業の近い将来がどうなるかも、スイス人にはよくわかっています。

このため、安い買い物をしても手放しで喜べず、喉に骨がひっかかったような (このような表現は小骨の多い魚を食する習慣がないスイス人にはありませんが)うしろめたさを感じながら、ショッピング・ツーリズムを続けている、というのが今のスイスの状況ではないかと思われます。

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参考ウェッブサイト
Konstanz ächzt unter Schweizer Einkaufstouristen, Janine Hosp, Tagesanzeiger, 22.12 2014.

Willkommen in der Schweiz, Konstanz! SRF Radio 1, 1.4.2015.

Deutsche wollen Einkaufstouristen aus der Schweiz ausbremsen, SRF Regional, 18.6.2015.

Einkaufstourismus weiterhin beliebt, 30. 6. 2015.

Einkaufstouristen fahren eine Stunde für Ausland-Schnäppchen. Tagesanzeiger, 30.6.2015.

Kreuzlingen leidet besonders unter der Frankenstärke. Konjunktur, Handelszeitung, 3. 8. 2015.

Der Druck der Einkaufstouristen steigt: Migros und Co. verlieren 11 Milliarden, Watson, 1.10.2015.

Zehn Jahre Aldi in der Schweiz. Weichgespülte Hard-Discounter, von Sergio Aiollfi, NZZ, Meinung, 16.10.2015.


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