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デジタルゲームの背後で起こっているテーブルゲーム・ルネサンス

今年もクリスマスまであとわずかとなりました。この時期、ヨーロッパの街はクリスマス市の訪問やクリスマスのプレゼントを買い求める買い物客で、1年で最も賑わいます。クリス マス商戦がはじまる直前の10月、毎年ドイツの北西ルール地方にあるエッセンという都市では、遊具メッセが開催されます。今年の メッセは、出店者数が41カ国から910、 訪問者数は16万2千人と、33年のエッセンのメッセの歴史のなかでも最大規模のものでした。

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このメッセは、一般人も訪れる、テーブルゲー ムの世界最大の遊具メッセとして特に有名です。(テーブルゲームとは、ボードゲームやカードゲームやさいころゲームなど、デジタルゲームはないものの総称で、アナログゲームとも呼ばれています。)遊具類のなかでも比較的高価なものであるテーブルゲームは、ドイツではクリスマスプレゼントの定番の一つで、11月、12月のボードゲームの売り上げだけで、年間の売り上げの3分の1になります。このため、このメッセは、クリスマス販売戦略上、玩具製造会社にとって非常に重要な宣伝の場となります。(ヨーロッパの販売戦略においてのドイツのメッセの役割については、「ドイツのメッセ・ビジネス」をご覧ください)

これまで、子どもの数の減少傾向に加え、デジ タルゲームの圧倒的な攻勢を受け、テーブルゲームは次第に廃れるとの予想が大半でした。しかし予想に反し、テーブルゲーム産業はいまも健在で、堅調な成長を続けています。エッセンの今年のメッセでも、1000点以上の新商品が披露されました。今回は、日本ではあまり知られていないと思われる、このテーブルゲームの近年の世界的な動向について少しご紹介します。

話はドイツからはじまります。ドイツは、伝統的にテーブルゲームが大好きなお国柄で、する人の数も多ければ、商品の数も種類も豊富です。特に1995年に販売を開始した「カタンの開拓者たち」というボードゲームを皮切りに、以後 優れたテーブルゲームがドイツから続出し、ドイツのテーブルゲーム は世界的に圧倒的な質と量をほこるブラントとなっていきました。毎年、400から600の新しいテーブルゲームがドイツ市場に出回り、 2013年のボードゲームの売り上げは4億ユーロと、景気にあまり左右されず、安定した市場を維持しています。 世界に冠たるテーブルゲーム製造会社大手も多くがドイツにあります。町の玩具店ではテーブルゲームがかなりのスペースを占めており、 最近は本屋でもテーブルゲームを置く店を、よくみかけます。

このテーブルゲーム大国ドイツで、 1979年から毎年初夏に、優れたテーブルゲームを選出するようになりました。ゲーム・ オブ・ザ・イヤー(日本語では「ドイツ年間ゲーム大賞」と呼ばれることもあります)と呼ばれるその賞は、以後、テーブルゲームの最高峰を象徴する世界的権威となり、映画界のアカデミー賞さながら、ノミネートされるだけで、市場にでまわるあまたのゲームのなかで知名度が一気に高まり、売り上げが大きく伸びます。さらにゲーム大賞をとれば、売り上げは約20倍 、30 万人の顧客確保につながるとも言われます。2013年に大賞をとったこの「花火」というカードゲーム(ゲームの名前が日本語で、ゲームの内容も日本の夏の花火大会がモチーフになっていますが、日本人がつくったものではありません)は、2014年前半までに70万箱売れました。

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このようなドイツ発のテーブルゲームは、 海外各地でも注目されるようになり、アメリカでは、 テーブルゲーム自体が「ジャーマンゲーム」と呼ばれるようになるほどメジャーになっていきます。「カタンの開拓者たち」は、これまでドイツ、オーストリア、スイスで9百万、世界全体で合わせると20カ国語以上に翻訳されて1800万箱がこれまで購入されています。ドイツで作られている全テーブルゲーム商品の30から50%が現在 輸出用であり、業界第2位のラーベンスブルガーでは、海外で購入されているのは、ボードゲームとパズルの60%にまでのぼります。

一方、ドイツのテーブルゲームの人気に並行して、これまでドイツがほぼ独占状態であったテーブルゲーム市場も変化していきます。とくにアメリカでは 新しいスタイルのテーブルゲームが次々とでてくるようになり、2011年にはアメリカ製のゲーム「クワークル」が、ゲームの最高峰であるゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。ドイツ国内外の遊具メッセでの外国企業の展示も近年急増しており、これまでテーブルゲーム市場をほぼ独占していたドイツ企業には、手強い競合相手が出現してきたといえますが、競合しながらテーブルゲーム市場が活性化され、ゲームの質がさらに向上、発展していくことにもつながっています 。イギリスの新聞ガーディアン紙によれば、2010年から 毎年、25〜40%、テーブルゲームの販売金額は全体で増加しており、年間を通じて数千の新しいテーブルゲームが出ている とのことで、世界的なテーブルゲームの盛況ぶりがうかがわれます。

このような状況はどのように解釈することができるでしょうか。日進月歩で進化しているデジタルゲームの人気は圧倒的であり、その傾向が、今後テーブルゲームによって覆されるとは決してないでしょう。その一方、デジタルゲームが提供することが不可能なことも明らかになって、全く異なる遊び方であるデジタルとアナログのゲームの住み分けが、少なくとも現状では成立しているように見えます 。

例えば近年は、ねらいを定めて的にあてたり、 パズルをはめこんだり、様々な触感や形の駒を並べて、バランスよく保ったり、というクラシックなコマとさいころの遊び方をはるかに超えた、物理的に触感や技能を楽しめるテーブルゲームが増えてきています。このような体と頭を多様に使う作業は、とくに子供達には、デジタルゲームでは代替し難い、 魅力的なものといえるでしょう。また、 テーブルを囲んで目の前の人と目線を合わせたり、相手方の思考を暗黙のうちに読み取ったり 、雑談などの社交的な雰囲気を楽しんだり、といったテーブルゲームにしかない伝統的な要素を、今でも高く評価する人も少なくありません。

ただし、テーブルゲームのゲームとしてのおもしろさがデジタルゲームに対して圧倒的に劣っていたなら、現在のテーブルゲームの地位はあり得なかったでしょう。デジタルゲームと競合することで、テーブルゲームもまたゲームの質を向上させ、数十年前に比べ、はるかに魅力的になってきました。コンピューターをボードゲームに内蔵させたハイブリッド型のゲームも増えました。

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そもそも、ゲームのユーザーにとっては、アナログとデジタルのゲームは、二者択一しなくてはいけないものではありません。ユーザーにとっては、交錯し、場所やケースによって代 替・補充できる関係です。デジタルゲームとなったテーブルゲームも多いですし、その逆もあります。スマホやタブレットでもともとボードゲームであったゲームのデジタル版をはじめるうちに、結局ボードゲームの購入を買い求めることになった、という人も少なくないようです。

このように、デジタルゲームとの競合・共存を経ながら、この数十年の間にテーブルゲームは新たな進化をとげてきました。ちなみに今年は 「街コロ」というカードゲームが、日本で作られたテーブルゲームとして初めてゲーム・オブ・ザ・イヤーの候補にあがりました。惜しくも大賞にはなりませんでしたが、シンプルなルールでありながら多様な選択肢のなかで街をつくるという夢のあるゲームで、洗練されたイラストも手伝って、ヨーロッパでも高い人気を集めています。これからも世界中のいろいろなゲーム・デザイナーが参入し、多様なエッセンスが加わっていって、テーブルゲームの発想や可能性がますます広がっていくのかもしれません。

年末年始、家族や友人が集う場で、なにかいつ もと違うことがしてみたいという方は、近年めざましく進化している新しいテーブルゲームを試してみてはいかがでしょうか。


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参考記事サイト
テーブルゲーム業界の近年の動向について
Bretter, die die Welt bedeuten. In: Süddeutsche Zeitung, 19.5.2010.

Spiele-Erfinder Träume in Pappschachteln, Von David Krenz, Spiegel Online, 27.09.2011.

Warum deutsche Brettspiele so beliebt sind. 2010.Von Carsten Dierig. 22.10.2010.

Computerspiele : Brettspiel-Kunst erobert die Konsolen. Von Hanno Balz. In: Zeit Online. 28. Oktober 2009

テーブルゲームの現在までの歴史的変遷について
Brettspiel (Wikipedia)

Board games war back. Board games' golden age: sociable, brilliant and driven by the internet. Written by Owen Duffy, In: theguardians, 25.11. 2014.

ドイツのボードゲーム (日本語ウィキペディア)




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