ネット販売における返品の法規制について
以下の記事は会員限定メールマガジン2011年01月25日号の一部です。
ネット販売においての返品はどのような法規制があるのでしょうか。
一般的なサイトでの明記の仕方はどのようにすれば良いのでしょう。
今回は「ネット販売における返品について」、湯川幸恵弁護士に詳しく解説していただきました。
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皆様は事業を進める中で,取引の相手方が事業者か,それとも消費者なのか,意識されていますでしょうか。
消費者トラブルが多発する中,消費者を保護するための法律が整備・改正され,より消費者保護が図られるようになってきています。消費者が保護されるということは良いことではあります。
ただ,消費者と取引をする事業者の立場からすれば,消費者を保護する法律が整備・改正されていくことは,規制の強化にもつながります。
消費者と取引をする事業者にとって,事業を進めていく上で,消費者を保護する法制度について関心を持ち対応していくことは極めて重要です。
今回,問題となる法律は,消費者を保護するための法律の一つである「特定商取引に関する法律」です(特定商取引法と呼ばれることが多いので,以下,特定商取引法と呼びます)。
特定商取引法で規制の対象とされているのは,訪問販売,通信販売,電話勧誘販売などで,事業者が守るべきルールやクーリングオフなどの制度が定められています。
ネット販売は,ネットによる広告を見た消費者がネットで購入の申込みをする取引であるので,特定商取引法では「通信販売」として規制の対象となることが通常です。
それでは,問題の返品についてのルールをみていきましょう。
特定商取引法では,通信販売で商品を購入した消費者は商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまでの間は購入申込みを撤回することや売買契約を解除することが認められています(特定商取引法15条の2)。
したがって,期限内であれば,消費者が購入申込みを撤回したり売買契約を解除して,商品を返品することができる,というのが特定商取引法の立場です。
もっとも,例外があり,事業者にて購入申込みの撤回や売買契約の解除について特約を定め,特約を表示していた場合は,商品に欠陥があるようなケースは別として,商品の返品に応じる必要はありません。
したがって,特約を表示しているか否かで大きな違いが生じることになるのです。
ここで注意していただきたいのは特約の表示の仕方です。
単に「返品不可」と表示しておけば良いのではありません。「返品に関するお知らせ」などと見出しをつけたり,表示の箇所,文字のサイズ・色などを工夫して,返品不可であることが購入者にとって分かりやすく表示することが求められます。
また,購入者が最終的に購入を申込む画面においても表示することがポイントです。
具体的な表現の例としては,商品に欠陥がない場合に一切返品を認めないのであれば,「商品に欠陥がある場合を除き,返品には応じません。」と表示することになります。
商品に欠陥がなくとも一定の期間内であれば返品に応じるのであれば,「商品に欠陥がない場合であっても,7日間に限り返品に応じます(送料は購入者にてご負担していただきます)。」と表示することになります。
『通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン』がございますので,詳細を確認されたいのであれば,下記をご覧下さい。
http://www.no-trouble.jp/page?id=1247043855065
なお,適切な表示がなされていないと業務改善指示や業務停止命令の対象となりますのでご注意下さい(罰則も規定されています)。
最後に,クーリングオフについて回答いたします。
クーリングオフ(cooling off)は消費者が頭を冷やして考え直し契約の申込を撤回したり契約を解除できるとする制度ですが,通信販売はクーリングオフの対象にはされていません。
特定商取引法を含め,消費者を保護するための法律は改正が続いています。上記の返品に関するルールを定めた特定商取引法15条の2も平成21年12月1日から施行されたもので,比較的新しいルールですので,ご存知でなかった方も多いのではないでしょうか。