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ドイツ語圏で人気の男性服専門のオンラインショップ 〜顧客の心をつかむキュレイテッド・ショッピング

今回は、キュレイテッド・ショッピングという、オンラインショプの新しいビジネスモデルでも、特に男性をターゲットにして急成長している業界について紹介したいとおもいます。(キュレイテッド・ショッピング全般の意味やビジネスモデルとしての可能性については、前回の記事「キュレイテッド・ショッピング 〜ドイツ語圏で始まった新しいオンラインビジネスの形」をご覧ください)


性別によって異なる買い物に対する考え
25歳から55歳のインターネット利用者男性1035人、女性570人を対象にした(前回も取り上げた)GfKの調査では、性別により買い物に対する考えや行動かなり違うこともわかりました。男性で買い物好きな人は13%にとどまり、買い物を休暇の楽しみと思っているのはわずか11%でした。一方、女性にも買い物嫌いの人はいますが、男性ほど多くはありません。女性の27%は買い物好き(買い物に時間もお金もかけるの嫌ではない)で、24%は、買い物を休暇の楽しみと感じています。男性のほうに圧倒的にショッピング嫌いが多いようです。また買い物に行く場合、女性は一人で行きたいのは37%で、誰かについてきてもらいたい人(31%)よりも多いのに対し、男性は一人で行きたいのは22%にすぎず、誰かに付き添ってもらいたいと思っている人(39%)はその約2倍もいました。

この調査を依頼した企業アウトフィッタリでは、男性にとって買い物で重要なのは結果(購入)であって、その過程が女性ほど重視されず、また類似する多くの選択肢から選ばなくならない、服の購入などは苦手なため、パートナーなどの同伴を希望する人がいのではないか、と分析しています。

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男性服専門のキュレイテッド・ショッピング企業
こんな男性をターゲットにして、2011年からドイツでは男性服専門のキュレイテッド・ショッピング企業が相次いで生まれました。今回は、業界のパイオニアで、かつ現在も業界をリードしている 「モドモトModomoto」と「アウトフィッタリOutfittery」という二つの会社を中心に、これまでの事業展開を概観してみたいと思います。


事業のはじまり
モドモトとアウトフィッタリは、ほぼ同時(モドモトが2011年12月から、アウトフィッタリはその2ヶ月後)に、ドイツで最初にキュレイテッド・ショッピングという事業を男性専門のファッション分野でスタートとさせました。それぞれ別に、しかも同時期に、同様の着想を得たといいます。「モドモト」のほうは、共同創設者二人の一人であるポヴァラ氏Corinna Powallaは、買い物嫌いの男性たちが、どうしたらその問題解決できるかと考えたのがきっかけで、「アウトフィッタリ」の二人の女性創設者たちは、ニューヨークで、自分で服を買う時間がないため、個人でショッパーを雇って自分に合うアウトフィットを調達している男性の友人をみて、お金のない人にも同じようなサービスができないかと考えて、このようなビジネスモデルが浮かんだと言います。


購入の流れ
購入の流れは、どこもほぼ同じで以下のようなものです。まず、客は、会社のサイトの手順に沿って、様々な個人の情報( 体のそれぞれの部分のサイズ、本人の写真、色、材質、ファッション・スタイル全般の自分の好み、予算など)を会社に送ります。会社によっては、スタイリストを写真やプロフィールから、自分で指名することができる場合もあります。まもなく、担当するスタイリストから顧客に電話があり、さらに詳細を話します。その後、スタイリストは、それぞれの会社が独自に開発したコンピューター・プログラムを利用しながら、顧客に合う服類を選びます。服類は、上から下までのトータルコーディネイトが一般的です。顧客がシャツだけなら一人で決められても、このシャツにどのズボンや上着が合うか、靴はどれにしたらいいのか、迷ってしまっては購入の手間ひまの削減にならないためです。顧客一人につき、コーディネイトした服類2〜3セットを用意します。

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数日後に顧客に小包が届きます。小包は、ビニール袋に雑然と入ってダンボールで送られてきくる通常の通販商品と異なり、あたかもタンスの引き出しがそのまま届いたかのように、シックな外装の箱に服や靴が整然と収められた形で届きます。箱をあけて最初に目に入るのは、担当スタイリストからの手書きでメッセージが書かれたカードです。スタイリストの写真入りのカードの時もあります。クラフトビールも中に入れて、服を試すときのわくわく感をさらに高めるような演出につとめる会社もあります。

送られてくる服類は、もちろんすべて購入してもいいのですが、2週間以内に、一部、あるいは全部を無料で返品をすることもできます。アウトフィッタリ共同設立者で経営者者のベッシュ氏 Julia Böschは、 店頭で試着したものを全部買う人はまずいないことを例にあげ、「返品は、自分たちのビジネスモデルの一部」であると強調します。返品がより簡単にできるように、 アウトフィッタリでは2016年2月から、集荷の場所と時間を選ぶと(自宅でなくても、カフェやスポーツクラブでも)無料で宅配会社が集荷にきてくれるサービスや、持ち込みできるコンビニも増やしました。ちなみに、スタイリストとのやりとりや選定は、どの会社でもすべて無料で、収益は商品を店頭価格で販売することで得ています。


顧客層
気になる顧客層はどのような人たちなのでしょうか。アウトフィッタリによると30歳から50歳の男性が圧倒的に多く、一回の注文で、平均 250ユーロ分の買い物をするといいます。これは普通の服飾関係のオンラインショップの一回の注文の3倍に当たる額だそうです。キュレイテッド・ショッピングを利用したことのある人の8割がまた利用したいと回答しているように、男性は一度そのサービスが気に入ると、あまりほかにそれずに信頼できる関係に頼る傾向が強く、そのことが、新しいサービスにもかかわらず、短期間で顧客数を飛躍的に増大させるのにつながったようです。


急成長する市場
スタートした当初はせいぜい顧客数1万人程度の市場になるかと言われていたキュレイテッド・ショッピング・ビジネスでしたが、これまでの5年間で「モドモト」も「アウトフィッタリ」も順調に成長してきました。4人でスタートしたモドモトは、2014年の時点で15万人の顧客、150人の従業員、2015年6月には200人の従業員を抱えるほど規模が拡大し、アウトフィッタリも、2015年末には200人の従業員を抱え、オーストリアやスイスなどの近隣諸国8カ国で展開するまで成長しました。そして現在は、顧客数40万人 、従業員数は約300人(そのうち約半分はスタイリスト)を抱える、オンライン・ファッション業界の重要なプレーヤーに2社ともなっています。追随する企業も増えてきました。 ファッション業界の大手オンラインショップZalando も最近 キュレイテッド・ショッピング市場に参入し(こちらは男女両方を対象にしたもの)、強力な競合相手になりつつあります。


顧客心理と将来の展望
さて、ここまで見てきたのが、キュレイテッド・ショッピング・ビジネスの表層部分であったとすれば、ここから先は、その下にある深層部分、この新しいトレンドにみえる顧客心理や将来の展望について、少し考察を加えてみたいと思います。

■ 男性をターゲットとした市場での女性の活躍
現在の男性服のキュレイテッド・ショッピング市場では、女性の活躍が目立ちます。会社設立者には女性が多く、スタイリストも女性がほとんどです。圧倒的に男性が多いスタートアップ企業のなかではきわめて異例です。

女性の存在が大きいのは、男性が服を選ぶ際に誰かに同行してもらいたいと思う人が多い傾向と、なんらかの相関関係があるように思われます。服の選択肢の洪水を前に途方にくれる男性にとって、洗練された感じの女性スタイリスト(サイトで公開されている写真に写っているスタイリストたちは、スタイリッシュでしかし落ち着いた感じの女性たちです)は、服選びで店頭についてきてくれる妻やガールフレンド役の、一種の代行役といえるかもしれません。そして、この人が選ぶなら信頼できるというような、不可視のプラス価値がついた形で送られてくる服は、顧客の気にも入りやすく 、それによって、さらに会社への顧客の満足度や信頼度がさらに高まるという好循環につながっているのかもしれません。

しかし、顧客男性が無批判に最初からスタイリストを信頼しているわけではもちろんないでしょうし、女性スタイリストも狭い流行だけを追う一律的なテイストに徹しているという意味でもありません。アウトフィッタリの従業員の出身国が25カ国であるということにも象徴されるように、企業側もスタイリストのタイプを広く揃えており、それぞれの地域の季節や地域的な趣向にも広範に細やかに対応しているからこそ、スタイリストとの間に信頼関係が成り立ち、その結果として、その会社を繰り返し利用する人が増加しているのでしょう。

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南ドイツやオーストリアでは、伝統的な服装をベースにしたファッションが、今も一定の人気を保っています。


■ アート、デザイン、スタイルの分野での強さ
現在のドイツでキュレイテッド・ショッピングが存在する分野は、ファッションとインテリア関連分野だけですが、この二つのジャンルには共通する特徴があります。それは、なにが「いいもの」なのかを決める誰にもわかるはっきりしたルールはなく、流行や、個人の裁量が「いいもの」を大きく左右する分野であるという特徴です。例えば、電気工具なら、その製品としての性能や値段で、ほかと比較することは簡単です。しかし、もしも「カジュアルでちょっとおしゃれな外出着」ならば、それぞれのデザインや材質で優劣をつけるのは難しく、時代や地域によっても評価は異なり、一貫したルールはありません。はっきりしたルールがもともとないのだから自分で勝手に選べばいいともいえますが、自分で判断するのに自信がない人や、そもそも服にそれほど興味がない(が、ほかの人からみて「いい見た目」の服を着たいしそのためにはある程度お金をかけてもいいと思っている)人には、かえってそれが難しく、それゆえ、スタイリストやアーティストといったその分野の才能に長けた人や専門家の発言や助言への依存が高くなりやすい分野、という特徴を有していると思われます。

このようにもともと、アーティスティックな専門家の発言や影響力が比較的強いジャンルは、人を介するキュレイテッド・ショッピングという土壌になじみやすく、今後も、優れてカリスマ的なスタイリストとしての才覚をもつ人工知能が出現するような時代がくるまでは(それが来るのかはまた別の問題ですが)、キュレイテッド・ショッピングという形は、かなり安定して存続できるのではないかと思われます。

■ 人との関わりか買い物の便利さか
前項に関連し、一見、矛盾・混乱するようにうつるかもしれませんが、もう一つ気になることがあります。現在のキュレイテッド・ショッピングは、人を介するというのが大きな売りですが、全般に今後もそうあり続けるのか、ということです。

現在は、個々の顧客の好みや経済事情などに最大限合わせた解答を出すためのアルゴリズムや人工知能が、猛スピードで発達している時代です。効率よく最良の選択肢を顧客のために選ぶだけなら、厳密にみれば、人を介するキュレイテッド・ショッピングである必要はないのかもしれません。今のキュレイテッド・ショッピング会社もコンピューター・プログラムを部分的に利用しているとのことですが、それが実際には、最後の選択まで及んでいて、人は電話の応対と手書きの手紙を書くだけであっても、顧客にはわかりませんし、結局誰が(人かコンピューターか)選んでいても、それで顧客が満足するのでよければ、それでいいという議論も可能かもしれません。

現在のキュレイテッド・ショッピングの動向をみているだけでは、キュレイテッド・ショッピングの売りの要となっている二つの側面、パーソナルな人と人との関係と、効率よく最短で購買できるという側面の、どちらのほうがより重要視されているのか、まだ見極められません。顧客もどちらをより優先すべきか、今の段階で深く意識しているわけでもないでしょう。しかし、アルゴリズムや人工知能が今度も急速に発達していくことを考慮すれば、企業の側は、それぞれキュレイテッド・ショッピングで長期的になにを強みとしていくべきか(例えば、あくまでパーソナルな絆や、あるいはスピーディーなデリバリーまでのプロセスなど)を常に意識し、今のサービスに執着せず柔軟に対応する必要があるでしょう。今の形に安住しないキュレイテッド・ショッピングこそが、キュレイテッド・ショッピングの未来の形といえるかもしれません。


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<参考文献>
------Gfkの調査結果について
GfK (Gesellschaft für Konsumforschung), Studie Einkaufsverhalten: Frauen und Männer trennen Welten, wenn's ums Shoppengeht, 30.11.2015. (2017年2月7日閲覧)

GfK-Studie Curated Shopping:Jeder dritte Online-User möchte künftig Personal Shopping nutzen, 5.10.2015.(2017年2月7日閲覧)

Bei Männern klappt Shopping nur mit Frauen, Online-Befragung, 20 Minuten,18. Oktober 2015.

------男性服のキュレイテッド・ショッピング業界について
Modemoto ホームページ

Outfittery ホームページ

Christoph G. Schmutz, Der Verkäufer als Alleskönner, NZZ, 31.1.2017.

Michael Rasch, Mission Männer verstehen, NZZ, 23.1.2017

Männermode aus dem Internet, Servicezeit, WDR, 8.5.2016.

Tom Müller, Endlich Schluss mit Kaufstress im Kleiderladen, Tagesanzeiger, 22.6.2015.

Kauf-Empfehlung: Online-Shops setzen auf Menschen statt Maschinen, Deutsche Wirtschafts Nachrichten, 18.5.2015.

Jochim Stoltenberg, So kleidet Julia Bösch die Männer bei Outfittery ein, ein Spaziergang mit Julia Bösch, Berliner Morgenpost, 14.08.2016.

OUTFITTERY, OUTFITTERY etabliert kostenlosen Abhol-Service europaweit mit UPS 01.02.2016

Miriam Schröder, Online-Stilberatung Outfittery, Ein Shoppingbudget von 22 Millionen Dollar

Laura Wasserman, Modomoto, Betreutes Shoppen für Männer, Handelsblatt, 06.11.2014.

Betreutes Einkaufen, Welt, 4.11.2012.

Ruth Wenger, Online-Shopping Betreutes Einkaufen für den modefaulen Mann, Welt, 12.04.2014.

Stephan Dörner, Outfittery Betreutes Shoppen für Männer, Gründerszene, 26.12.2015.




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