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ノンカロリーのお茶でケーキ風味を味わう 〜ドイツの老舗製茶メーカーの「ケーキ味のお茶」という冒険

2年ほど前、ドイツで変わったお茶が登場しました。ケーキの味がするお茶です。ケーキに合うお茶でも、ケーキをまぜたお茶でも、お茶の味がするケーキでもありません。単なるお茶だけれど味はケーキ味、というものです。一体これはどんなもので、実際に飲むとどんな感じなのでしょう。そもそも、ドイツには多彩なハーブティーやフルーツティーの伝統があるのに(詳細については、「バラエティーに富むハーブ ティー文化」をご覧ください)、なぜ、このような妙なお茶が生まれたのでしょう。そして人々の間ではどのような反響がでているのでしょう。今回は、この謎(?)の多いケーキ味のお茶に注目しながら、お茶をめぐるドイツの現状と今後の展望について概観してみます。


ケーキ味のお茶の種類
まず、このお茶について詳しくみてみましょう。まず、2015年初頭に、ドイツ語で「ティーポット」を意味する「テーカンネTeekannne 」という名前の製茶メーカーから、レモンケーキ、ブルーベリーマフィン、キャラメルアップルパイ味の3種類のお茶が発売されました。翌年4月からはイチゴチーズケーキ味も加わり、これら4点は「Sweeteas」という新しいシリーズのお茶として売られるようになります。2016年秋からは、ドイツのほかの製茶メーカー、メスマーMessmer 社からも4種のケーキ味(いちごチーズケーキ、チョコ・チェリー・ブラウニー、クランベリートルテ、アップルシュトゥルーデル味)が揃って発売されるようになります(アップルシュトゥルーデルは、オーストリア でよく食べられるりんごのパイの一種)。

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お茶は、りんごやオレンジの皮などの本物の果物、ほとんどノンカロリーの植物由来の甘味料である ステビア、そしてそれぞれのケーキの風味を作り出す香料という、主に3種類の原材料からできています。気になる味とその評価はどうでしょう。商品の評価欄をみてみると、いずれのお茶も絶賛と酷評の両極端に分かれています。わたしもテーカンネ社のブルベリーマフィン味とアップルパイ味のお茶を試してみましたが、評価が割れる理由がわかる気がしました。ブルーベリーやりんごなどの風味と甘さだけでなく、マフィンやパイの味など商品名のついているケーキの味が本当にするのは確かなのですが、その事実をどう評価するかは、人によって大きく異なるのでしょう。人工的につけられたケーキ風味に不自然さや違和感を強く抱く人の評価は、当然低くなるでしょうし、逆にいつも同じではなく、ちょっと変わったフレーバーを楽しみたい人や、飲むうちに違和感が薄れた人には、好意的に受け入れられやすいということなのだと思います。

他方、好みか好みじゃないかという次元とは別に、このお茶は、糖分やカロリーを控えなくてはいけない人には、これまでなかった新しい選択肢として受け入れられるかもしれません。ケーキが食べられなくても、ケーキを食べる時の匂いと感覚を、お茶という形で味わうことができるためです。卑近な例ですが、先日このお茶を糖尿病の友人に贈ると、とても喜んでもらえました。ただし、新しい食品である分、ほかの食品以上に、人工的に配合された香料など、食品としての安全性に配慮を払う慎重な姿勢も必要でしょう。

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いずれにしても、メーカーとしてもっとも気がかりなのは、嫌いな人の数やその理由ではなく、支持して買ってくれる人が実際にどれくらいいるかでしょう。コーラ業界の異端児ドクターペッパーのように、全市場で占める割合は少なくても、根強いフアンがある程度形成されれば、ビジネスとして成り立つためです。実際の状況をみると、テーカンネ社の販売する4種類のケーキ味のお茶はすべて、発売からわずか2年の間に支持者を増やし、 今年2月現在で、同社のフルーツティー部門のトップ15位以内に入るまで、売り上げを伸ばしているそうで、お茶業界の新商品としてはかなり健闘しているといえるでしょう。


老舗の製茶メーカー
ところで、ケーキ味のお茶を現在販売しているテーカンネ社とメスマー社は、どちらも19世紀に創設されて150年の歴史をもつ、ドイツの老舗製茶メーカーです。これまでの長い歴史のなかで、多種多様なお茶を、家でも気軽にいれられるスタイルにして定着させるのにも貢献してきました。今日一般的な二つ折り型のティーバック(筒状にしたものを二つ折りにして 、上部をホッチキスや糸で止めた形) は、1949年のテーカンネ社によって発明されたものですし、ティーバックの製茶が自動化されるようになって、お茶は手頃でバラエティーに富んだ飲み物の一つとして広く普及しました。今日のドイツ語圏のスーパーではどこでも、この2社の製造するお茶をはじめ、多種多様なお茶が、20袋ほど入ったティーバックの箱詰めで、ほかの飲み物に比べて比較的安価(ドイツでは平均 2ユーロ前後)で手に入ります。

テーカンネ社は、今日、生産拠点を8ヵ国にもち全部で1500人の従業員を抱える、世界有数の製茶メーカーにもなっています。 生産するお茶の種類は450種類以上、毎年75億個のティーバックを販売しており(2007年現在)、昨年は、グループ全体の売り上げが4億2500ユーロにのぼりました。

このような話を聞くと、しかし一つの疑問が浮かびます。なぜ老舗の製茶メーカーが、よりによって伝統的なお茶の意味や価値を覆すような、人工的な風味のお茶の生産をはじめたのでしょうか。


増えてる?減ってる?お茶の消費量
それには、ドイツの近年のお茶をめぐる状況が関係ありそうです。近年、ドイツではお茶全体の消費量はこれまでないほど増えているのですが、消費が増えているのはペットボトルに入ったアイスティーのように容器に入った形で販売される物に偏っているようで、茶葉あるいはティーバックを自ら入れて飲む従来の形のお茶の消費量は、むしろ減少の一途をたどっています。2013年10月からの1年と2年後の1年を比較すると、 ドイツで販売されたお茶は1000t減って2万6700tです(これは平均すると、ひとり当たり年間、ティーバックの箱6箱分を消費していることに相当します)。特に、これまで 一番茶葉を言えるお茶の形としてよく飲まれてきていたハーブティーの消費の減少が目立ちます(Gassmann, 2017)。

容器詰め清涼飲料水の市場にはすでに多数の食品会社が参入していますし、先細りしていく伝統的なお茶の市場にこだわるだけでも、未来にむけて明るい展望は期待できません。このため、長年、多様なお茶の種類の生産にたずさわってきた老舗の製茶メーカーとしては、新しい活路を、 お茶の新商品の開発に求め、その成果の一つが、ケーキ味のお茶となったのではないかと考えます 。

ケーキ味のお茶は、味として新しいだけでなく、これまでにない別の付加価値も加わっています。それは、テーカンネ社のケーキ味のお茶の広告フレーズ「あなたの小さな甘いカロリーゼロの休憩時間」によくあらわれているように、ケーキは食べたいけど太るのはいや、あるいは、いつでもどこでもケーキの風味を味わえたら便利、という一見無理な、しかし現代人の少なからぬ人がもっている要望を (完璧ではないにせよ)可能にする、という付加価値です。


ドイツ産のお茶のお茶大国中国への進出
国内の市場が先細るのなら、海外に市場をもとめるということも企業にとって選択肢の一つです。テーカンネ社は、実際この路線にも力をいれており、2014年のロシア進出に続き、昨年2016年には、中国のお茶のオンライン通販会社でリードする Hangzhou Efuton Tea Co. Ltdと契約し、中国での販売や共同開発を進めていくことを発表しました。

世界的なお茶大国の中国において、ヨーロッパの製茶メーカーが、実際にどれほどシェアを伸ばせるかは未知数ですが、テーカンネ社側としては、当面、ターゲット層を絞り、その人たちに最適とみなされる厳選したお茶の種類を販売することを目標にしています。具体的に対象と考えられている人たちは、中国でも西欧のライフスタイルに強い関心をもっている若者層です。健康食品への関心が強まっている中国において、ジュースや人工的な飲料水に代わる健康的でおいしい飲み物として、ヨーロッパ産のハーブティーやフルーツティーをアピールすれば、人気が得られやすいのではないかと考えられているようです。

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具体的に最初に売り出す種類として選ばれたお茶は、Tropical Fruits、Raspberry & Strawberry、Orange Garden、Mint & Lemon、Apple & Peach、Winter Night、Apple Strudelの7種類で、いずれも異国情緒がありながらフレーバーが連想されやすいイラストつきのパッケージに入ったティーバックです。お茶はどれも、カフェインなし( ハーブティーやフルーツティーは一般的にカフェイン類が含まれていません)で加糖もされておらず、高品質が保証されたもので、自然食品のイメージにもぴったり合います。


おわりに
どこでも暮らしが豊かになってくると、おいしくかつ健康的な食品・食事への要望が高まります。しかし、人々がおいしいと思い求める食品と健康的な食品は必ずしも一致していません。むしろ現代の食生活において、おいしいと思う食品に高カロリーがつきまとうことが多く、 人々を悩ませることになります。 今回とりあげた、ケーキ味でしかしカロリーオフのお茶は、このような食品事情のパラドックスから生み出され、いろいろな思惑や矛盾が錯綜している現代の食生活が象徴されているといえるかもしれません。

このような新たなお茶商品が登場することで、お茶を、単に水分補給や、あるいは自然や健康飲料として飲むだけでなく、高カロリーの食品を控えるかわりにお茶を飲むといった、全く新しい観点からのお茶の習慣が、世界中あちこちで展開・定着していくのかもしれません。どんな味か飲んでみるまでわからないティーバックの袋のように、お茶の未来は未知のベールに包まれています。


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<参考サイト>
------テーカンネ社の「Sweetteas」シリーズ(ケーキ味のお茶)について
商品紹介公式サイト

TEEKANNE eröffnet modernste Tee-Produktionshalle Europas, 01.05.2014

Der erste Tee für Naschkatzen - TEEKANNE Sweeteas, 23.3.2015.

Seit mehr als 130 Jahren ist Ihr Genuss unser Ziel! (2017年3月31日閲覧)

Unwiderstehlich süß: Die Sweeteas Nasch-Bar verführt den Handel, Düsseldorf, Feb. 2017.(2017年3月31日閲覧)

TEEKANNE expandiert in den chinesischen Markt, September 2016 (2017年3月27日閲覧)

Teekanne plant Expansion "Apple Strudel"-Tee für China, Welt.de, 13.09.2016

Michael Gassmenn, Verpackung So funktioniert der Kapsel-Trick bei Tee, Welt.de, 16.1.2017.

------メスナー社の「Kuchentee」シリーズ
商品紹介公式サイト(2017年3月27日閲覧)

------その他
Teekanne, wikipedia (2017年3月27日閲覧)

Meßmer (Unternehmen), Wikipedia (2017年3月27日閲覧)

Getränke: Tee in Deutschland beliebt wie nie: Trend zu grünem Tee, Zeit online, 26. Mai 2016.

Verordnung (EU) Nr. 1169/2011 (Lebensmittel-Informationsverordnung), Wikipedia (2017年3月27日閲覧)




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