パリで出会った日本人(家庭料理研究家 奥田玲子さん)

パリで出会った日本人(家庭料理研究家 奥田玲子さん)

2014-05-31

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(奥田玲子×辻本貴幸)


「家庭料理は家族という人間関係を繋ぎ、培うもの。いつの時代も食卓は家族が集まる場として普遍的な存在であって欲しいと思っています」

こう語るのは、家庭料理研究家で、ケーキ教室『Eclat』(エクラ=大阪府)を主催する奥田玲子さん。
食育や、口からの美を伝える奥田さんが語る、いつまでも健康で、輝き続ける秘訣とは?
私の友人でもある、奥田さんにお話しを伺いました。

まず、奥田さんがパリに来ようと思ったきっかけはなんだったんですか?
奥田さん(以下、奥田)「以前に日本で『秋の味覚の一週間』というシンポジウムがあり、私もそれに参加したんです。その時に、フランスのシェフの方たちもたくさんいらっしゃって講演されていたんですね。そこで彼らのような有名なシェフたちが食育の活動をしているということを知ったんです。日本ではまだまだ正しく周知されていなかったことが、フランスでは何年も前から既にはじまっているということに驚きました。国民が食に興味を持っていて、有名シェフたちによる食育活動もさかんな国で作られ、食べられている家庭料理というものに興味を抱いたのが最初のきっかけでした」

実際にパリに来られていかがですか?
奥田「パリに来てまず驚いたのは、家族の食卓の在り方でした。こちらでは少し遅くなっても家族が全員揃ってから、皆でご飯を食べるんです。もちろん食事をするダイニングルームにはテレビや新聞は置いていません。家族皆が忙しく時間に追われている日本ではなかなか見られなくなった光景だと思いますが、家族で会話を楽しみながら食卓を囲むというのは家族の基本。忙しい現代人にとって、テレビや携帯を見ながら一人でささっと済ませるという食事スタイルが必要になるときもあるかと思います。でも、だからこそ心や時間に余裕をみつけて、大切な人たちと食事を楽しむということを大事にして欲しいと思っています」

奥田さんの思う、パリの魅力とは何だと思いますか?
奥田「美しさと汚さが共存しているところだと思います。パリってこんなに綺麗な街なのに足元をみると汚いですよね。ちゃんとゴミ箱もあるのにタバコの吸い殻や空き缶、ありとあらゆるゴミをその辺にほかす(捨てる)。犬の糞は皆拾わずに置きっぱなし。日本から来た私は、もっと綺麗にすればいいのにと思ってたんです。でも、日本人の方でパリにはもう40年以上住んでらっしゃる、ある偉い先生とお食事をご一緒した時に「パリって汚いですよね?」って私言ったんですね。そうしたらその方が「汚さも含めてパリの魅力だ」っておっしゃるんです。「どんなに綺麗な女性でも、パンツの中は汚くて臭いでしょう?それと同じだよ」って」(笑い)

汚いものがあるからこそ、綺麗なものがより引き立つ訳ですよね?
奥田「そうなんです。それは辻本さんのファッションでも同じだと思うんですけど、表も裏もただ綺麗なだけのものってつまらないと思うんですね。明暗があるからいい。だから私は、そこも含めてパリの魅力だと思っています」

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個人的な話をすると、僕はいつも玲子ちゃんって呼ぶんだけど。
奥田「はい」

この写真もそうなんだけど、たまに玲子ちゃんがお菓子とかいろいろ差し入れしてくれるじゃない?
あれって美味しくて大好きなんだけど、いつも玲子ちゃんの手作りなんでしょう?

奥田「そう。あれは私が作ってるの。ちゃんと健康にも気を遣って甘さ控えめで、その分フルーツをたくさん使ったりして」

玲子ちゃんとは時々食事にも行くんだけど、その時にいつも思うのは、玲子ちゃんは野菜とかいろいろバランスよく食べていて凄いなって。
僕はいつもお酒を飲みながら、何も考えずに好きなものだけを食べてるから・・・。

奥田「きさきくんは偏食だし、私は野菜ソムリエでもあるから、どうしても気にはなるのよね。でも、子供の頃に楽しくバランスよく食べることを知っていたら、特別意識しなくても、自然と食べられるようになる。そういう風にしてあげるのも食育の一つだと思うの」

なるほど。食育の大切さ、身に沁みますね。
奥田「だけど、きさきくんはいつもたくさんの人と一緒にいるでしょう?相手が日本人でもフランス人でも、いつも楽しく食事をして、お酒を飲んでる。それってすごく大切だし、難しいことなのよ」

確かに、日本では今ぼっち飯っていうのが話題になってますよね?
京大の学食ではお一人様席、いわゆるぼっち席を作ったら大人気だとか。

奥田「そうね。それに便所飯(友達がいないため、トイレで一人でご飯を食べること)っていうのもあったでしょう?そういう人たちだって、きっと一人で食べるのが好きなんじゃなくて、誰かと食べたいと思っているはず。大学の学食なんてあんなに友達がたくさんいる中で、本当に一人で食べたくて食べてる人ってどれくらいいるのかなって。家族や友人、恋人と会話をしながら食事をすることってとっても楽しいことなのに。だけど最近は誰かと食事をしていてもテレビや携帯に夢中なんて人も多い。私たちは孤独の孤と書いて孤食なんて言い方をするんだけど、寂しいですよね」

フランスではその辺りはどうなんですか?
奥田「フランスでは一人で食事をする人があまりいません。一人の場合は「ここに座っていいですか?」から会話が始まりますよね。会話をしながら食事を楽しむことを本当に大切にするフランス。気軽に声をかけあうことが大切なんじゃないかと感じます」

玲子ちゃんが主催しているエクラではそういうことも伝えてる?
奥田「これからそういうことも伝えていきたいですね。私はこれまで口からの美について伝えて来ました。生きるエネルギーとなる食べ物を摂取する口、会話しながら笑顔が生まれる口、それが、人の輝きに繋がると思っているんです。口からの美は笑顔を出せる自分だから」

これからのエクラ、どうしていきたいですか?
奥田「パリに来て、こちらのマダムから料理を教わったり、フランス語のレシピ本を翻訳したりと、濃密なパリ生活で学んだことを今度は私の教室で生徒の皆さんに発信していけたらと思っています。今は私の誕生日にきさきくんからいただいたラデュレのレシピ本を一生懸命翻訳しているところ。ただ、フランスにはフランスの、日本には日本の食文化があるでしょう?その国の風土に合った食ってとても大切だと思うんです。その辺りも意識しながら、私なりに工夫したレシピを皆さんに伝えていけたらいいなと思っています」

最後に、このコラムを読んでいる日本の皆さんになにか一言いただけますか?
奥田「フランス語でエクラは輝きという意味。私にとってキラキラ輝くことは料理だったんです。だから、皆さんも少しでも興味のあることを見つけたら、まずは悩む前に扉を叩いてみて欲しいですね。そうすれば、きっとそこにはキラキラ輝くことが待っています」

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家庭料理研究家 奥田玲子

京都府出身。
家庭料理研究家として、自身でエクラ教室を主宰する一方、野菜ソムリエ、歯科衛生士としての顔も持つ。
歯科衛生士としての知識を活かし、食だけでなく口から考えるトータルビューティ―も伝えている。
また、エクラでは野菜ソムリエ認定教室として、自身の故郷である京丹後市で採れた野菜を使い、野菜の美味しさを伝える食事プレートも提供している。

ケーキ教室『Eclat -Patisserie Class-』
大阪市北区中之島
TEL090‐5151‐7102

Kisaki Tsujimoto
2014.05.31
辻本貴幸


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