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日本ネット輸出入協会の認定講師に関しまして

2015-12-06 [EntryURL]

時々、一般の方からご質問をいただくことはあるのですが、本日、
「協会の認定講師制度はありませんか?」 と、あるメディアからお問い合わせをいただきました。

メルマガ等では、以前より発信させていただいておりますが、
弊協会は、認定講師の育成・講座などのコンテンツはありませんし、これからも作る予定は一切ございません。

ネット輸出入ビジネスというビジネスの性質上、短期間での知識の詰め込みでは一定ラインの絶対知識量には達成しませんし、ビジネスですので実績を出していない方がそういった肩書きを持たれるのは全く本意ではないからです。

協会の活動目的は、
正しい情報・最新ノウハウのシェアであったり、グレーな手法への警鐘 です。
もちろんこの協会運営もビジネスではありますが、利益が出ればより多くの方々に知っていただくべく広告費に使わせてもらったり、既存の会員様へのコンテンツの充実に使わせていただいています。

協会会員様に配信させていただいているコラムを執筆していただいている専門家・エキスパートの方々や、不定期の協会主催セミナーに登壇していただいている方には、わたし自らお願いして協会にご賛同いただき、本当に些少の報酬でご無理を言ってお願いしています。

今後もご賛同いただける協力者の方と共に、このスタンスは変えず、わたし個人としてもライフワークとして運営していく所存ですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

関連記事:協会ビジネスのお誘い


学校のしくみから考えるスイスの社会とスイス人の考え方

2015-12-03 [EntryURL]

柔軟でグローバルな思考を維持するのに、国際比較という手段は、明快で手っ取り早い手法の一つかと思います。歴然とした社会のしくみの違いを目のあたりにすると、それぞれの国で「当然」だと思われていることを改めて みてみるきっかけになったり、 これまで全く意識に上らなかったことが見えてきたり、あるいは違う社会どうしの共通する課題も見えやすくなります。

今回は、子供のスイスの現地校通学体験を通して、日本とはずいぶん異な るスイス人の考え方と社会のしくみの一端をお伝えしてみたいと思います。学校のしくみを取り上げるのは、長年住んできたスイスで、こ れが、わたしにとって一番大きなカルチャーショックを与え、同時に新しい考え方に気づかせてくれたものだったためです。なお、スイスでは地方の自治権とても強いので、州によって義務教育事情に若干の違いもありますが、ここではチューリッヒ州を中心に話を進めます。

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学業至上主義

スイスの学校は、端的に言うと、「学ぶ」という一点が最大唯一のミッ ションで、それ以外の余計と思われるものはなるべく省こうとする、ミニマリズムが貫かれているという印象を受けます。

入学式や卒業式といった儀式を重んじる行事も、展覧会や運動会、学園祭 に相当するような学校全体が高揚してまとまる年間行事もありません。(ただし行事がないわけではなくて、ほとんどすべて学級の先生が 独自に企画するのでクラス単位になり、先生によってずいぶんする内容も頻度も異なります。)クラブや動物飼育などの課外活動も学ぶ 「学校」の管轄外ということで、学校活動にはなく、 やりたい子は地域のスポーツや他の各種のクラブに自分で参加します。制服も校歌も学力向上の目的と直接的な相関性が認められないのでしょう、一切なしです。

児童が自分の学校がどこかわかっていればそれでいいということだからなのか、 学 校の名前が校内のどこにも見当たりません。校門もなければキャンパスを取り囲む壁も塀もなく、誰でもいつでもキャンパスに立ち入ることが可能です。

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学校全体のつながりの薄さを象徴するきわめつけが、校長職です。学校の顔ともいえる校長職自体が、最近までクラス担任の先生が兼任したり、誰かがまとめあていくつかの学校の事務を片付けることで事足りて、すべての学校に常駐していなかったくらいでした。さすがに近年、学校の業務が増えて、兼任するのは大変になったため、2006年からは教育条例が変わり、すべての学校に校長を配置されることになりました。ただし、学校をあげての行事や儀式がないこともあり( 色々なイベントはすべて学級単位です)、生徒が校長に会う場面は少なく、小学校で校長がどの人で、なんという名前かを聞いても、わからない子も多いようです。

また、スイスは世界的にもまれな「直接民主制」が残っている国で、教育条例や、新しい校舎の建設如何も、住民投票で決めるため、校舎が不足していても、住民投票で校舎増設が不要という意見が多数となり、 新設できないというケースもこれまで何度もありました。共稼ぎの家庭にとっては大変便利なはずの給食制度や全日制度が、スイスでいまだに導入されないのも、そのためにかかる膨大なコストを自治体が負担することを妥当とするコンセンサスが、まだ住民のなかにできていないからだと考えられます。

自己責任と自律を尊重

こんな具合に、学校という場への思いは、「我が母校」というようなしみじみとしたイメージとはほど遠い、あっさりした即物的なもので、無駄と思うものには、ばっさり住民投票という手段で節約のメスが入ります。その一方、(生活や風紀など)はそれぞれの子供や家庭にまかせほとんど干渉せず、ルールも無駄、無理を省いて最小限なので、自 己責任の名のもとに、 子供の自律や自由度が保たれていると言い換えることもできます。

例えば、基本的に授業に障害をきたさない限り、幼稚園から中学まで一貫して服装や持ち物も自由です。お化粧もアクセサリーもかまいません。休み時間の、パンや果物などの間食も認められています。というより、休み時間に生徒が何かを食べることになんら学校側で問題が見当たらないので、禁止する必要がないのでしょう。ただし、 学校側にとって、教室が食べ物で汚れると面倒なので(掃除は子供達ではなく、放課後に掃除サービスの人がします)、原則として雨の日も 冬の零下の日も屋外で食べることが条件です。しかし学校の屋外スペースには基本的に椅子などありませんから、みんな立ち食いになりますが、それを良くないとするこれといった理由もないようです。

学校への通学にもうるさいことを一切言われません。小学校入学のその日から自転車はもちろん、キックボードやスケートボード、一輪車での通学も全く問題ありません。学校のキャンパスに入るまでは、なにかあっても自己責任、学校の責任ではないというスタンスです。

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とはいえ、一つだけルールがあります。それは親につきそわれずに通学することです。このルールは、学校だけでなく、2006年 以降就学前に義務教育の一部となった2年間の幼稚園でも、子供が自立する第一歩として重視されており、それができるように入園まもなく幼稚園には警察が来て、歩行者のための交通ルールをきちんと教えます。このため、朝と昼時には、幼稚園児や単独でそれぞれの目的地に闊歩する姿が、スイスでは週日の日常風景です。同様に、自転車通学が多い小学生にも、詳しい交通ルールを実地試験をふまえながら、 段階的に教えていきます。

このようなスイスの学校のしくみは、自分が慣れ親しんできた日本のそれとあまりに違うので、子供を現地校に通わせはじめた当初は、驚きの連続でした。しかし生徒の学力向上という一点に照準を合わせ、ほかのものは本当に必要なのか、それにはいくらコストや労力がかかって採算は合うのか、とスイス人風の思考に沿って考えてみると、学校のしくみはとても一貫してわかりやすいものに見えてきます。日本人からみると、一見、学校は味気のないようにもみえますが、不可解なルールや習慣に拘束されることが少なく、時間的にも自由度が高いというよさもあります。もちろんなにか学校で問題が起きることはありえますが、起きた時に個々に対処するというスタンスであり、はじめから全員を対象に禁止するルールを作っておくというやり方は、学校 だけでなくスイス社会全般に基本的になじまないようです。

違う角度からみると、子供が安心して街を通園・通学できるような恵まれ た環境であるからこそ、学校にほとんど校則がなくて、先生や親が学校周辺の安全キャンペーンすることもなく、むしろひとり歩きを奨励するような、飾り気のない素朴な学校制度が成り立っているといえるのかもしれません。鶏と卵どちらが先かのように、学校とそれを取り巻く環境、どちらが先に良かったのか、というような簡単な問題の立て方では実情は把握しにくいですが、いずれにしても、現状が、どちらももちつもたれつの均衡関係で、良好な状態を保っている状態であるとことは確かだと思います 。

学校への評価と社会を支えるしくみ

このような公立の学校の在り方はスイスでどう評価されているのでしょうか。チューリッヒ州全体の95パーセントの就学児は、公立幼稚園・小中学校に通っていて、私立学校がほとんどないという事実は、もちろん経済的な要因もあることながら、公立学校におおむね満足・評価している人が圧倒的多数であることを物語っているといえるのではないかと思います。

安価な保育所や給食制度などの手厚い(しかし税金が高くなる)制度が今もないスイスは、ヨーロッパの中でもかなり珍しい存在ですが、その分、ボランティアや救済組織などがカバーする領域と動員数が多いのもスイスの特徴です。スイス全住民の約4人に一人が公式・非公式のボランティア活動をしており、総時間数で6億25百万時間にのぼります。15歳から75歳までのスイスで過去12ヶ月に救済組織に寄付した人の数も全体の72%と、隣国(ドイツ42%、 オーストリア57%、 フランス26%) に比べても、非常に高い割合です。社会の信頼関係や協調的なネットワークを「社会資本」として指数化した最近のヨーロッパ比較調査でも、スイスは社会資本指数が非常に高く、つまり社会的な協力関係や連帯力が強い、国の一つであるという結果になっています。これらのデータから解釈すると、スイスは、北欧流の社会福祉国家とは別の形で、必要な社会機能を維持している国であり、学校という制度もそのような社会基盤の上に成り立っていると言えるように思います。

素朴で骨太なスイスの社会システムとそれの上に成り立っているライフス タイルについて、今後も比較の視座から、折々紹介していけたらと思います。

参考文献

Markus Freitag (Hg.), Das soziale Kapital der Schweiz. Politik und Gesellschaft in der Schweiz Band 1, Zürich 2014.

Themenzeitung von Swissfundrainig und Zewo, November 2015.

穂鷹知美
ドイツ学術交流会(DAAD)留学生としてドイツ、ライプツィヒ大学留学。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年から、スイス、ヴィンタートゥア市 Winterthur 在住。
詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。


デジタル・リテラシーと図書館 〜スイスの公立図書館最新事情

2015-11-26 [EntryURL]

日本でも公立図書館のあり方をめぐり昨今いろいろな議論がでているようですが、ヨーロッパでも、公立図書館の今後の在り方をめぐって議論が重ねられています。インターネットで多種多様なコンテンツがどこからも簡単に入手できる今日、図書館の意味が根幹から問われているといえます。

一方、厳しい図書館をめぐる状況を逆手にとって、自己改造に邁進する図書館もみられます。スイスのヴィンタートゥアの市立図書館もそのひとつで、去る11月14日には、デジタル時代の図書館の可能性を提示するスイスで初の大型イベント「メイカーデイ Makerday」を開催しました。

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もともとヴィンタートゥア市立図書館は、変化する時代の需要にスイスのなかでもいち早く対応して、先駆的な地域の図書館づくりを行ってきた図書館の一つです。これまで開架図書棚を減らしながら、従来なかったいろいろなスペースを作り、多様な需要に対応できるようにしてきました。

例えば、入り口付近にと地下2階に多目的スペースやホールを作り、そこでは地域の様々な人や団体と連携しながら、ミニレクチャーやコンサート、展示、ワークショップ、ゲーム大会など、書籍に直接関係しない様々な文化的なイベントを、年間を通じて行っています。これによって、本の貸借り業務では図書館に来訪しないような人たちにも、図書館に立ち寄る機会をつくり、様々な出会いやコミュニケーション機能を担う地域の公共施設としての役割を果たそうとしてきました。

また、一人世帯が増えると同時に地元に根付いた伝統的なカフェやパブのような飲食店がチェーン店にどんどんとって代わってきている時代に呼応し、公共の図書館にこれまでなかったような社会的な機能、一人でも気軽に立ち寄ることができる、家でも職場でもない新たな「第三の場所」の機能を果たすべく、 ゆったりくつろげる閲覧コーナーや飲食可能なスペースを館内に複数設けました。

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小学生以下の子供、ティーンエイジャー、青年向けなど細かい年代に合わせた閲覧スペースや、多言語の図書も積極的に配置するなど、どの世代や社会層にも立ち寄りやすい場所となるよう工夫も重ねてきました。フランスでは、テロリストの温床として国内の移民出身者の問題が改めてクローズアップされてきていますが、そのフランスでは、1996年から2013年までに70もの図書館が放火されたといいます。放火の背景として、移民出身者たちの間で、エリート学校などと同様に、図書館に対し疎外感や敵意が広がっていたことを指摘する専門家もいます。いずれにせよ、門戸を大きく広げ、疎外感をもつ住民をむしろ積極的に取り込んで、社会全体の融和・統合の一端となり、言語や学力向上にも寄与することが、ヨーロッパの公立図書館にとって今日、重大な任務のひとつとなっています。

ここ数年は、デジタル時代に対応したサービスの多様化や最適化にも力をいれてきました。DVDやブルーレイ、プレイステーションやWiiなどの様々なメディアやゲームを増強するのと並行して、家からインターネットを通じて借りるこ電子図書館 サービスを導入しました。文字コンテンツだけではなく、映画や音楽などのマルチメディアのコンテンツも借りることができる東スイスの図書館ネットワークの電子図書館は、 書籍の貸出が年々減るのと対照的に、利用数が急増しています。

そして今回のヴィンタートゥアでの全館あげてのイベントでは、さらに先をゆく図書館のサービスの方向が提示されました。それを一言で言えば、新しいデジタル技術を住民が利用するための支援サービスです。せっかくデジタル化された便利なコンテンツが世の中にでてきても、使いこなすことができなければ 意味がなく、時代から取り残されてしまうことにもなりかねません。そのため、図書館を、住民が新しい日常や仕事で必要な様々な技術や能力、「デジタル・リテラシー」を習得し、実際にそれを駆使して作業できる場にもしていこう、というのです。

当日は、地下2階から地上5階までの全館会場で、インターネットで公開されている公的資料の閲覧の仕方やE-book の扱い方、クリエイティブ・コモンズの紹介、ビデオの編集・制作、スライドやレコードなどのアナログ・データのデジタル化方法の説明、また人気ゲームやレゴなどの人気のツールを用いたワークショップなど、デジタル世界を体験できる多種多様な催しが行われました。

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さて実際のイベント会場での反響はというと、スイス初のメイカーデイという話題性もてつだってか、開場と同時に大勢の人が訪れ、どの階もかなりの賑わいでした。 子連れや若者も多かったですが、とりわけ、これまでの伝統的な図書館の利用者である年配の方もかなり多かったのが印象的でした。図書館館長がドイツのオンラインマガジンの取材インタビューで語っているように、年配の方も含めて図書館利用者が、図書館の新しいサービスに対して前向きで意欲的なことが、今回の訪問者の多さにあらわれているように思われます。当図書館では、デジタル時代の新しい図書館の需要を改めて確信して、今後もデジタル技術を実際に習得・利用できるメイカースペース(メイカースペースについて の詳細は、別のコラム「古くて新しいDIY ブーム」をご参照ください)をさらに来年3月までに拡充する予定です。

19世紀以来ヨーロッパ において地域のリテラシー(読み書き能力)の向上に大きく貢献してきた公立図書館は、今後、デジタル・リテラシーの普及や向上にも関与・ 寄与していくのことができるのでしょうか。図書館の新たな挑戦がはじまろうとしています。

参考文献とウェッブサイト

Die Zunkunft des Papierverleihs. Von Kathrin Passig, Die Zeit. Online. 4.11.2013.

Makerday in der Stadtbibliothek

Bruder gegen Bruder. von Christian Jungen. In: NZZ am Sonntag, Hintergrunde, 15.11.2015. S.25.

Bibliothekskonzepte Braucht die Bibliothek der Zukunft noch einen Ort? , Hermann Romer, Muri, 23. Oktober 2010.

Die Bibliothek als Dritter Ort. Von Robert Barth, BiblioBe.ch. Information für die Schul- und Gemeindebibliotheken des Kantons Bern, Fachbeiträge, 19.02.2014.

Virtuelle Ausleihe. Bibliotheken rüsten digital auf. von Yannick Wiget, St. Gallen, 4.2.2013,

Bibliothekenstatistik. Die Renaissance der Lesestuben. Von Alice Kohli, 1. 9. 2014.

Schweiz: Stadtbücherei Winterthur wurde mit “Makerday” zum Mekka für Tüftler und Macher.von Marcel Thum. In: 3Dgrenzenlos.de. Das Online-Magazin mit Nachrichten und Berichten über 3D-Drucker und zum 3D-Druck weltweit.18.11.2015.

穂鷹知美
ドイツ学術交流会(DAAD)留学生としてドイツ、ライプツィヒ大学留学。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年から、スイス、ヴィンタートゥア市 Winterthur 在住。
詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。


日本ネット輸出入協会のマグネット作りました

2015-11-25 [EntryURL]

少し大きいですがマグネット作りました。 セミナーにお越しいただく方々にお配りしようと思っています。 151125.jpg 不評ならやめます。。。。

スイス人のショッピング・ ツーリズム

2015-11-18 [EntryURL]

ドイツの南西ボーデン湖にほとりに、コンスタンツという中世の町並みを残す小都市があります。今年の4月1日エイプリルフールの日、スイス国営ラジオ放送では、この小さな町がスイスに統合された、というニュース が、コンスタンツ市長へのインタビューなどもふまえて、まことしやかに流れました。こんなジョークが出てくる背景には、この町とスイスとの並々ならない関係があります。 151118-1.jpg コンスタンツは、スイス側の隣町クロイツリンゲンと連なって発展してきた町であり、中世にはスイスへの帰属を自らスイスに願い出たりもしました。しかし、スイスのカトリックの州が、プロテスタント勢力が強いコンスタンツの編入に反対したため、願いは受け入れられず、結局 ハプスブルク家、そしてドイツ建国後はドイツ、バー デン・ビュルテンベルク州に帰属することとなり、今に至っています。しかしその後もスイスとの国境を接する地理的な位置が、その後も町に決定的な影響や恩恵をもたらしてきました。特に大きかったのは第 二次世界大戦末期の戦時下で、多くのドイツの都市が空襲で多大な被害を受けた中、隣町とほとんど境がなく発展していたコンスタンツは、連合軍が中立国スイスの町を誤爆することを恐れたため、空襲を受けずに残りました。 そして現在、スイスという隣国のおかげで 、空前の好景気にみまわれています 。強いスイ スフランのおかげで、 ショッピングセンターが軒を並べるコンスタンツに大勢の買い物客が、押しかけているのです。特に今年はじめの 1月15日、スイス国立 銀行が対ユーロの上限を突然撤廃したためにスイスフランが急騰する、いわゆるスイスフラン・ショックが起きて、スイス人の国境を越えたショッピングにさらに拍車がかかっています。 151118-2.jpg 人口8万3千人の都市は、スイスでもないのにスイス人であふれかえり、特に週末には、ショッピングセンターへ向かうスイス車両の渋滞で、 深 刻な交通麻痺が引き起こされるほどです。コンスタンツを中心に、スイスと国境を接する税関には150人が勤務し、日夜免税書類の発行手続きに携わっています。(ちなみに、2014年一年間でドイツが発行した 全免税書類数は1600万通にのぼりました。)サービス業就労者が全就労者の8割を占めるコンスタンツの労働市場で、2015年7月の市内とその周辺地域の失業率が3−4%にとどまり、ドイツ全体の平均6-7%をはるかに下回っているのも、コンスタンツの小売業界の好景気を物語っています。 このような「ショッピング・ツーリズム」とスイスでよばれている国境周辺のショッピングの実態を把握するため、今年、ザンクトガレン大学がショッピング・ツーリズムをするスイス人3000人を対象に食品、健康・美容商品、服飾、スポーツ用品、家具・インテリアの5分野に分けてアンケート調査を実施しました。この調査による と、購買する人が最も多かった商品分野は食品で、1年間で国外に買い出しにいく回数は平均8.5回、一回の支出は平均155 スイスフランです。次に多かったのは、健康・美容商品で、年に5.4回海外で購入し、一回の支出額は81スイスフランでした。そして 2015年1年間に外国で購入される総額は推計で、全5分野で約90億スイスフラン、他の分野の商品を含めた全体では、昨年より10億フラン多い110億スイスフランにのぼるとされます。 調査の結果で、スイス人自身が特に驚いたのは、ショッピング・ツーリズムは、国境周辺に在住するスイス人だけでなく、中央スイスの人々にも浸透していることでした。中央スイスの居住者は、この5分野の必需品の30パーセント以上を海外から調達していると回答しています。買い出しにはほとんどの人が車を利用し、平均して片道1時間、50キロの道のりを移動しています。 151118-3.jpg 無論、国境まででかけなくても外国の安価な商品を手にいれるのに、インターネットの通販やディスカウントショップなどの選択肢もあります。しかしスイス国内に輸入する際の免税額(商品によって異なりますが郵送料も含めて65フランが上限である場合が多い)に比べて、自ら海外で買った品物の免税金額がはるかに高い(300フラン)こともあり、国境への買い出しの人気は変わりません。特に食品類を通販で買う習慣はほとんどな いため、消耗品である食品類の買い出しに定期的に海外にいくのが恒例化しているようです。 10年前からスイスに進出しはじめたドイツ系のディスカウントショップも、国境までの買い出しが普及している消費者にとっては、割安感は薄いようで、二大ディスカウントショップ両者の前年の全売上額は、今年のショッピング・ツーリズムの推定総額のわずか4分の1を占めるにとどまっています。 今年の物価比較調査では、クリームやローションなどスキンケア商品は、スイスはドイツに比べて7割、服は4割も割高という結果がでており、さらにドイツの19%の付加価値税(日本の消費税 に相当)が一人当たり300スイスフラン以内の買い物であれば、スイス人には免税となることも考えると、地続きで気軽な国外へのショッピング・ツーリズムは、もはや国内市場と争うものではなく、避けて通れない購買パターンの一つとして定着しても無理がないように思います。 一方、長期的な自国の雇用確保や環境保護などの観点を意識し、個々の消費者がそれぞれ国内と国外の購買の種類と量に配慮していかなければ、巨大なヨーロッパEU市場に 囲まれた小国スイスの多種の産業・小売り業の近い将来がどうなるかも、スイス人にはよくわかっています。 このため、安い買い物をしても手放しで喜べず、喉に骨がひっかかったような (このような表現は小骨の多い魚を食する習慣がないスイス人にはありませんが)うしろめたさを感じながら、ショッピング・ツーリズムを続けている、というのが今のスイスの状況ではないかと思われます。

参考ウェッブサイト

Konstanz ächzt unter Schweizer Einkaufstouristen, Janine Hosp, Tagesanzeiger, 22.12 2014. Willkommen in der Schweiz, Konstanz! SRF Radio 1, 1.4.2015. Deutsche wollen Einkaufstouristen aus der Schweiz ausbremsen, SRF Regional, 18.6.2015. Einkaufstourismus weiterhin beliebt, 30. 6. 2015. Einkaufstouristen fahren eine Stunde für Ausland-Schnäppchen. Tagesanzeiger, 30.6.2015. Kreuzlingen leidet besonders unter der Frankenstärke. Konjunktur, Handelszeitung, 3. 8. 2015. Der Druck der Einkaufstouristen steigt: Migros und Co. verlieren 11 Milliarden, Watson, 1.10.2015. Zehn Jahre Aldi in der Schweiz. Weichgespülte Hard-Discounter, von Sergio Aiollfi, NZZ, Meinung, 16.10.2015.

穂鷹知美
ドイツ学術交流会(DAAD)留学生としてドイツ、ライプツィヒ大学留学。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年から、スイス、ヴィンタートゥア市 Winterthur 在住。
詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。


ルールとモラルを守ってこそ本当のビジネスです

2015-11-15 [EntryURL]

わたしのコンサルティング会員さんからご報告がありました。 見つけた商材のショップに直接訪問し海外販売の話をされたそうです。 話はまだまとまっていませんがいい感触のようです。 この行動力も賞賛に値するものですが、サイトの作り方のご質問もありました。 この方、女性ですが4月にわたしの輸出ビジネス(R)エキスパート養成講座に入っていただいた方で、そのときは初心者だったので当然なんにも全くわかりません。 それがサイト制作に関してもうなんの抵抗もなくなったというのは本当に嬉しくビックリでした。 是非うまくいってほしいと思います。 このようにスキル、または収入がステップアップしていくとビジネス的に新しい経験ができるようになります。 ルールやモラルが絡んできます。 前述の会員さんの場合ですと、提携できれば契約もしなくてはいけませんし、販売者としてのモラルも発生します。 前月から、輸入ビジネスの第一人者、株式会社インポートプレナーの大須賀祐氏に3ヶ月間、協会会員限定のコラムを連載していただいています。 前号では「個人輸入という名の恐ろしい罠とは!?」と題して執筆していただきました。 「個人輸入」ではビジネスはできないという内容でした。 知っててルール(法律)違反する人もいますし、知らないでやっている方もいます。 やはりビジネスする上でルールとそしてモラルは絶対守らなければいけません。 いまみなさんがされているネット輸出入ビジネス。 資金が必要ないので誰でも簡単に始められますが、障壁もあるということをご理解いただき、販売方法や商材等々が法律に抵触していないかご確認ください。 またモラルは守れているか。 ネットビジネスは自分に甘いと簡単にグレーな手法に走ってしまいます。 線引きできていない人が多いように思えます。 知っていてやっている人は論外ですが知らずにやってしまっている方も多いです。 よく初心者の方でまだeBayの出品もしていないのに、売れた後のことや、クレーム処理のご質問をいただくことがありますが、わたしは詳しくお答えしません。 まずはやってみてからです。 作業工程に関する予備知識は必要ありません。結果を出す遠回りになります。 ですがルールやモラルに関する予備知識は必要です。 始める前に調べて整理しておきましょう。

オーストリア観光業界と日本人

2015-11-12 [EntryURL]

スイスでは強いスイスフランが、産業界だけでなく観光業にも打撃を与えています。2015年の1月から9月までの総宿泊数(延べ宿泊者数)は前年比で15万人0.5%減りました。一方、 ユーロ安が続くユーロ圏では、世界中から訪れる観光客で賑わっています 。国の規模や言語、またアルプスの山々に囲まれた地形や伝統でも、スイスと共通点が多いお隣りの国、オーストリアもそのひとつです。オーストリアでは2000年から2014年までの15年間で旅行客総数が1100万人(42%)増え、総宿泊数は1800万泊増加しています。昨年一年間にオーストリアを訪れた 外国人観光客の数は、2530万人でした。人口でオーストリアの10倍以上の人口を抱える日本の2014年の年間外国人観光客が、前年比で3割増であっても1341万人であったのと比べると、2530万人という数がいかに大きいのかがわかります(オーストリアの人口は約850万人)。連日オーストリアを行き交う難民の報道がされていた今年2015年も、5月から9月までにオーストリアを訪れた外国からの客数は、前年比で9パーセント増え1290万人、国内旅行客と合わせると1930万人(7.2%増)で、総宿泊数は6250万泊(3.9%増)と好調です。 151112-1.jpg オーストリアで特に増加傾向にあるのが、 アジアとアラブからの旅行客です。この二つの地域からの旅行客は、2009年から2014年までにわずか5年間で 1.5倍に急増しており、2014年の旅行数は160万人、総宿泊数は310万泊にのぼりました。アジア・アラブからの旅行客は、全旅行者数のなかで は、いまだ5.1パーセントにすぎません が、2020年までにさらに全体の10%にまで達すると見込まれています。観光客の急増は、単にユーロ安や個々の地域やリゾートの観光キャン ペーンに起因するのではなく、これまでいくつかの国籍所有者に課せられていたビザをなくすなどの滞在手続きの簡略化や、直行便を増やすなど、国や空港会社を巻き込んだトータルな観光戦略が功を奏していると考えられます。2020年までには、さらにウィーンへのアラブとアジアからの直行便を20便増やす予定です。 このように目下、大盛況のオーストリアの観光業界ですが、新たに顧客獲得の市場として来年重点的な観光キャンペーンが計画され、先日発行されたオーストリアの国立観光協会の隔月の定期雑誌bulletin の最新号(10・11月号)でも特集で扱われているのが、日本です。アジアでも中国、韓国、台湾でいずれも、上記の調査期間で、観光客が2倍から3倍に増えているのに対し、日本からの観光客は、2011年以来伸び悩みあるいは、むしろ停滞しています。 151112-2.jpg 自分たちが外国の観光市場のターゲットと して注目されているという話はあまり聞く機会がなく、市場調査の目で自分たちがどうみられており、また実際に日本人はどんな旅行の仕方や 支出をしているのかを、客観的に見聞するのも、ちょっとおもしろいかと思いますので、国立オーストリア観光協会の発行する分析資料や特集 記事での内容をすこし紹介してみます。

旅行者層と旅行の目的

2011年以降オーストリアへの日本からの旅行客は停滞気味であることは上述しましたが、依然として年間ヨーロッパを旅行す る300万人の日本人観光客のなかで、オーストリ アは重要な訪問先のひとつです。とくに20代から30代の女性と、60代以降の方に高い人気があります。社会層でいうと、65%が大学卒業の高学歴者で、会社員や公務員が多く、クラシック音楽のコンサート・ホールや美術館などの洗練された文化施設訪問と都市観光、それにアルプスの自然散策やショッピングを合わせてできることが、オーストリアを好む理由と考えられます。ただし自然といっても、本格的な山登りではなく、山の景色を楽しむ程度の観光が大半です。 151112-3.jpg

旅行の決め方と旅程

家庭において日本で旅行に決定的な役割を果たすのは女性です。情報をインターネットやメディアで入手し、最終的に旅行先や旅程を決め、旅を予約するのも女性です。 旅行の予約は、旅行会社を通すのが圧倒的 で80%にのぼります。そのうちの2割弱が全行程の決まったパッケージ・ツアーで、4割がフリー・パッケージツアーを選択しています。旅程は、ウィーン、ブダペスト、プラハなどを歴訪するクラシックなルートが依然多いのも特徴です。オーストリアの滞在日数は平均二日だけですが、77.5パーセントという圧倒的な多数が、 4つ星か5つ星のホテルに宿泊し、交通費を除いた一人の1日平均の支出額は170ユーロです。ヨーロッパの隣国や国内旅行客などに比べると、一日の支出額はかなり高額です。

旅行客としての日本人の特徴

英語が読めても話すのが苦手な人が多いので、外国人とのコミュニケーションには非常にシャイです。このため日本語が話せるガイドなどの仲介者に高い価値をおきます。また日本人が パッケージ・ツアーを好むことからもわかるように、グループや団体だと安心して旅行できるようです。 日本人は、知り合いや親戚におみやげを買うのが大好きで、おみやげは、旅行先に関係あるものでなくてはなりません。キーホルダーやネイルチップやCDやお菓子類がその典型です。

気をつけたほうがいい豆知識

日本人は部屋で靴を脱ぐのを好むので、ホ テルの部屋にはスリッパなどを置くのがいいでしょう。 お茶を部屋で飲むのも好きなので、電気ポット(湯わかし機)もあると喜ばれます。(ドイツ語圏のホテルの部屋には一般的に設置されていないところが多い) オーストリアの一般的な食事の量は、日本人には多すぎます。また、日本人は、小さいお皿にたくさんいろいろな種類のものが入っているのを好みます。肉も魚もほとんど問題なくなんでも食しますが、魚にはいつもしょうゆをつけるのが好きです。 4の数字は好まないので、部屋の番号でこ れがついているものは日本人に渡さないのが無難でしょう。 日本人は、アジアのほかの人といっしょくたにされるのを好みません。 大事なポイントとして、何であるかより も、それがどう、見えるか(表面的な形)が重視されます。 2016年3月から計画されている、日本の市場強化キャンペーンでは20代、30代のいわゆるOLと呼ばれる女性たちや、これまでほとんどオーストリアに来たことのない東京周辺の若者たちを主なター ゲットとし、オンライン中心で展開されるようです。観光大国オーストリアの観光協会をあげての日本でのキャンペーン、果たしてどのようなものなのでしょうか。ぜひお手並みを拝見したいものです。

参考ウェッブサイト

Mitteilungen. 05.11.2015. BFS, Tourismus (0350-1510-30), Beherbergungsstatistik im September 2015, Logiernächtezahl sinkt im September Woher kommen die Zuwächse? Östrreich Werbung. Sommersaison 2015 bis September. Östrreich Werbung. Asiens Touristen fliegen auf Österreich. Kurier, 12.5. 2014. Fokus auf neue Ziegrpuppen. In: bulletin. Fachmagazin für die touristische Praxis, 10/15-11/15, p.6-9. Snapshots Asiatische Märke. Positive Impulse für den Tourismus aus Asian, 8.5. 2015. Japanische Touristen meiden die Schweiz, 13.12.2014, SRF News Das neuen Entdecker: Wie Gäste aus Asien dem Schweizer. Tourismus neuen Schub verleihen. Die Volkswirtschaft. Das Magazin für Wirtschaftspolitik, 9-2012, S. 36-7.

穂鷹知美
ドイツ学術交流会(DAAD)留学生としてドイツ、ライプツィヒ大学留学。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年から、スイス、ヴィンタートゥア市 Winterthur 在住。
詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。


ジャーナリズムを救えるか?ヨーロッパ発オンライン・デジタル・キオスクの試み

2015-11-04 [EntryURL]

社会のオンライン化が進む中、日本同様、スイスを含むドイツ語圏でも、紙媒体の書籍や新聞離れが急速に進んでいます。 これに伴って、新聞社や出版社各社は、オンライン紙面の有料化やウェッブの広告など、新たなツールでの収益化を模索してきました。その結果、オンライン版の新聞や雑誌の購読者数は年々増加し、世界的に名高いスイスの日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)も、オンライン版の購読が全体の1割を占めるまで成長してきています。しかし、グーグルとフェイスブックの広告収入が年々増加するのに対し、メディア産業の広告収入は減少傾向にあり、 紙媒体のメディアの減益分を取り戻すような状況にはいたっていません。 151104-1.jpg 先行きがみえないこのようなメディアをとりまく状況下で、新しいメディア・サービスがドイツ語圏で今年の9月中旬からでスタートしました。オランダで2013年からはじまったブレンドル Blendleというもので、簡単に言えば、複数の新聞や雑誌を手にとってパラパラめくって、気に入ったものだけ購入できる 駅前や街角のキオスク(売店)のオンライン・デジタル版です。最初に簡単な登録手続きを済ませると、 ドイツ語圏やほかの欧米の有力な新聞や雑誌100誌の表紙や記事の見出しと冒頭の数行を、一覧することができます。 さらに既存のキオスクにもない、デジタル・キオスクならではの画期的なサービスがいくつもあります。 まず、雑誌や新聞を丸ごと買わずに、気に入った記事があれば、その記事だけを買うことができます。また、数ある記事から自分におもしろそうなものを探すのが面倒という人には、自分が気になるテーマを選択すれば、その分野について専門の編集委員が選んだおすすめの記事を ウェッブで一覧したり、毎日メール配信してもらうことができます。おすすめの記事には、日本の本屋さんでよくみかけるポップのように、 編集委員のまとめや紹介の文章もつけられていて、購入前に内容を客観的に判断するのに役立てることができます。そして極めつけは、記事を購読したあとも、気に入らなかったら、全額返金してもらうというサービスです。これらの従来の紙媒体のメディアにはない柔軟・多様なサービスで、潜在的読者にジャーナリズムの質の高い内容が身近になることが期待されています。 151104-2.jpg このオンライン・デジタル・キオスク・サービスはオランダで始まって1年半の間で、購読会員が30万人まで増加し、 メディアも充実し、今年の6月までにオランダで発行されているメディアの90%を扱うまでに急成長しました。 購入はプリペード方式で10ユーロや50ユーロをあらかじめ支払う必要がありますが、新規登録者には 2ユーロ50セント分のクーポンが提供されるので、最初はそれを使ってサービスを試してみることができます。記事の購読料は長さや質によって多少異なりますが、一記事だいたい15セントから1ユーロの値段で、利用者は月に平均10〜15記事を購入しているそうです。収益は30パーセントがブレンドル、残りをメディアの発行元がとるということになっています。 気になる返金率ですが、会社側の説明では、返金できるサービスがあってもこれまで、返金を求める人の割合は少ないそうです。スイスのあるアンケート調査で、90%以上の人が、良質なメディアのコンテンツを得るために支払う用意があると回答したとのことですが、人々はオンライ ン・メディアの情報に対価を払うこと自体を躊躇しているのではなく、むしろデジタル時代に適応して効率よく良質の情報を購入する仕組みが、これまだ確立されていなかった、ということが、これまでの最大の問題だったのかもしれません。 今後、ジャーナリズムの仕事が適切に評価され対価が払われる「ジャーナリズムのiTunes」とも言えるようなこのようなしくみが、 軌道にのることになれば、良質の記事を生産するジャーナリストたちの手堅い経営基盤ともなりうるでしょうし、個々の記事をデジタルな地平で競争化させるという意味では、ジャーナリズムを今後さらに活気づけることになることにもなるかもしれません。 151104-3.jpg ドイツ語版キオスクについても、出版業界での期待は概ね高いようで、ドイツ大手出版社2社は昨年ブレ ンドルへ300万ユーロの投資も行っており、スタート時点から有力な日刊紙や雑誌を含む37誌がすでにオンライン・キオスクに並んでいます。サイトの登録者数は、オランダの創業時点からの総計で50万人に達しました。 一方、登録人数よりもある意味でもっと、注目されるのが、利用者の年代です。これまでの利用者の半分以上が、35歳以下という若い世代で、これまで紙を媒体にしていたニュース・メディアが読者としてほとんど獲得できなかった世代です。若者世代と大手出版社や新聞社がこのサービスを通じてつながったのだとすれば、これまで若者の間で圧倒的な優位を誇っていたSNSやほかのオンライン・メディアと、競合するためのスタートラインに、やっと大手メディア各社が立てたということなのかもしれません。 スタートから日が浅く、今はまだ試験的な段階ですが、もしかしたら行き詰まったドイツ語圏のジャーナリズム界における力強い突破口になるのかもしれません。

参考ウェッブサイト

Belndle, 100 Seconden Wissenschaft. In: SRF Radio 2 Kultur, 26. 10. 2015. Auflagezahlen der Schweizer Presse Vormarsch der elektronischen Zeitung. In: Neue Zürcher Zeitung 1.10.2014. Online-Zeitungskiosk Blendle startet in Deutschland. von Kurt Sagatz. In: Tagesspiegel, 6. 9. 2015. Der digitale Kiosk zieht seine Rollläden hoch. In: Die Welt, Kultur, 14. 9. 2015. NZZ-Artikel neu im Onlinekiosk von Blendle erhältlich. In: NZZ Mediengruppe, 11.9.2015. Die Furcht vor den Riesen spaltet die Verleger. Medienkongress 2015. von Patrick Gasser in: Jungfrau Zeitung, 12. 9. 2015 Fabian Vogt, Blendle: «iTunes für den Journalismus» in der Schweiz gestartet. In: Computerworld.ch News, 14. 9. 2015

穂鷹知美
ドイツ学術交流会(DAAD)留学生としてドイツ、ライプツィヒ大学留学。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年から、スイス、ヴィンタートゥア市 Winterthur 在住。
詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。


協会主催 第9回ネット輸出入EXセミナー

2015-11-01 [EntryURL]

bn_exseminar_2.jpgのサムネール画像

こちらのセミナーは終了いたしました。

日本ネット輸出入協会主催 ネット輸出入EXセミナー

2010年から不定期で開催させていただいている「ネット輸出入EXセミナー」
日本ネット輸出入協会主催で毎回、ネット輸出入ビジネスのエキスパートの方々に貴重なお話をしていただいています。

今回、第9回目は「eBay (イーベイ)」「アマゾン輸出」「海外サイト販売」という『輸出ビジネス』に特化したセミナーです。

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輸出ビジネスに特化したセミナーになります。

  • 新セラースタンダードのディフェクトの変更点説明
  • 1時間の価値を増やす、設備投資による作業効率UP
  • ○○○の少ない商品を狙う
  • 海外販売、税金還付のメリット
  • 海外販売に対してのマインド
  • eBayテクニック・・・写真、商品説明画面、情報整理方法
  • 効率の良い見込みリストの集め方
  • 売れる可能性が高い○○○○が違う商品
  • ショップカードの活用法
  •    
  • コンバージョンの高いリストは○○○○で集める
  • ○○○○名で検索1位にするメリットとは
  • 海外の企業とショップに向けて販売する方法
  • リサーチは○○○に「○○○○○」を付けて検索するだけ
  • アマゾン輸出で差別化を図るには
  • 効果的なドメイン取得方法
  • ツールを使っての商品選びがダメなら、「○○○で商品選び」
  • SEO対策重視のサイト制作からの脱却
  • ライバルに知られずに販売する方法
  • eBay・アマゾン輸出・海外サイト販売の比較
  •    


などについてお話していただきます。
※内容は一部変更される場合があります。

今回登壇していただくゲスト講師の方々です。

HAL代表 藤井彰一氏(eBay担当)

eBay新セラースタンダードとビジネス向上テクニック

fujii.jpg1984年生まれ岡山県出身、岡山県在住。
2013年に自営業を初め3期目に入る、現在社員1名パート3名体制。
学生時代から続けてきた副業を本業にし、100%のフィードバックを維持しつつ 顧客満足による、リピーター獲得に成功。

海外販売・越境の可能性を自分の趣味を活かしての販売で実践中。
誰でもボーダレスに活躍できるノマドビジネスをeBayを使い広めている。


株式会社J-next 代表取締役 松井勇氏 (アマゾン輸出担当)

アマゾン輸出商品リサーチ:みんながやってる真逆の方法で売り上げUP!

matsuiisamu.jpg1973年大阪府堺市出身。大学卒業後、食品メーカーへ就職。その後、広告代理店、飲食業・・・。様々な業種・職種を経験し、2006年にアクセル・ワン有限会社を設立。

他業種を経験する事に寄り得た様々な視点から生まれるアイディアを実践。独学で学んだホームページ集客により、デザインの制作、販売をする一方、ホームページ制作及びコンサルティング活動などを行う。

2013年にアメリカ法人の設立に参加しCOO(最高執行責任者)に就任。本格的に輸出ビジネスに参入する。
2015年には、販売代行専門会社、株式会社J-nextを設立。多くの中小企業の海外販売のサポートを行っている。


株式会社テントゥワン 代表取締役 塚原昭彦 (海外サイト販売担当)

サイト販売で集客とコンバージョンを上げるリスト活用法

大学卒業後、地元の銀行に就職後、3度転職し、2007年独立。
新聞配達をしながらネットビジネスを続け、ネット輸出のサイト販売で大きく業績を伸ばす。そのノウハウを活かし、海外への個人輸出ビジネスのコンサルティングをはじめる。

海外へのマーケティング、eBay・サイト販売でのノウハウをクライアントにアドバイスしており、成功者を多数輩出。サイト制作サービスにも注力し、ジョイントで国内外の物販サイトを200以上運営。

2010年に一般社団法人 日本ネット輸出入協会を設立し、ネット輸出入ビジネスの法律・税務関係の情報をシェアしている。
アメリカ法人 Next Links Japan,Ltd.最高経営責任者。
著書:「世界一やさしい ネット輸出ビジネスの稼ぎ方」「世界一やさしい小さな会社のネット集客超改善バイブル」。


開催日時とお申し込み

■開催日時:2015年11月28日(土)14:00~17:00(休憩含む)
■開催場所:大阪 ■セミナー料金:10,000円(税込)


■セミナー終了後、懇親会がございます。
(希望者のみ 懇親会費4,000円は事前お支払いいただきます)

※ 会場は交通の利便性の良い場所を考えております。

こちらのセミナーは終了いたしました。

セミナーのお申し込み
カード各種

在籍6ヶ月以上の協会会員様はセミナー料金は無料となっております。
協会会員ない方で、6ヶ月前払いでご入会の場合はセミナー料金は同じく無料とさせていただきます。
尚、セミナー音声ファイルは協会会員全員にお届けいたします。

※尚、返金につきましては、セミナー開催前日まで受付させていただきます。 セミナー・懇親会ともお席の確保の関係上、当日キャンセルの返金はできませんので、予めご了承お願いいたします。

過去のネット輸出入EXセミナーの様子

ネット輸出入セミナー1
第1回 【大阪開催】
ネット輸出入セミナー2
第5回 【東京開催】
ネット輸出入セミナー3
第6回 【大阪開催】

セミナー会場でお会いすることを楽しみにしております。

今回は、わたしが10年以上ビジネスとしている「輸出ビジネス」をテーマに開催させていただきます。
外的要因の強い輸出ビジネス。eBay・アマゾンのサスペンド、Googleアルゴリズムの変更でいきなり売上げがなくなるという恐怖が現実的にあります。
わたしはコンサルティング会員様には常々、eBay・アマゾン輸出・海外サイト販売ができて本当の「輸出ビジネス」だとお伝えしています。
eBay・アマゾン・サイト販売の独立したところとリンクするところを理解していただきご自身のビジネスに活かしていただければ幸いです。

一般社団法人 日本ネット輸出入協会
代表理事 塚原昭彦

【2015年11月10日追記】セミナーの様子

たくさんの方々にお越しいただきました。ありがとうございました。

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折り紙のグローバリゼーションと新たなフロンティア

2015-10-24 [EntryURL]

突然ですが問題です。折り紙はドイツ語で何というでしょう? 正解は Origami です。スイスにきてまもないころ、日本では紙を折っていろいろな形を作る文化があり、それを「Origami」と言う、 ということを大抵のスイス人が知ってるという事実に、びっくりしました。 紙を折る文化は、多かれ少なかれ、紙がある国ならどこでもみかけられる、ごく普通のことだと日本では思われがちですが(私もそう思っていましたが)、スイスでは一般の人たちはおろか、幼稚園や小学校の教師でもほとんど折らず、折る場合もいくつかのごく 簡単な折り方しか知りません。当然、子供達も教えてもらうことができません。日本の折り紙のような複雑で多様な折り方がないのです。 歴史的にはヨーロッパでも幼稚園を世界で初めて作ったフリードリヒ・フレーベルのように、折り紙を教育的な観点などから評価する動きや、折り方を色々考案した人もいたにはいたのですが、大衆に広く支持される身近なものにはならず、日常で今日も残っている折る文化と言えば、食卓を飾るテーブルナプキンを折るくらいです。このような、折り紙の伝統が乏しいスイスをはじめとする欧米の国々では、日本の折り紙文化が、「Origami」という言葉ごと紹介・輸入されることになったのでしょう。 Origami1.jpg
フレーベルが考案した折り紙の例。出典: Armin Täubner, Das grosse Fröbelbuch.
Kreative Bastelideen aus Papier nach Friedrich Fröbel, Stuttgart 2012

その輸入文化「Origami」が、現在DIYブーム(DIYについてはコラム記事 「古くて新しいDIYブーム」を参照ください)を追い風にして、スイスで子供だけでなく大人も楽しむ手作業として静かなブームになっているように思います。 地元の公立図書館の所蔵する本を調べると、Origami というキーワードの検索で出て くる本は59冊あり、 1965年に出されたものが最初で、80・90年代以降、折り紙の本が増えていきます。このころから次第に折り紙という言葉と折り紙工作が少しずつスイスでも知られるようになっていったのでしょう。近年は、子供向け、大人向け、また動物折り紙やデコレーション用など、折り紙のなかでもテーマを特化したものが多くなっており、様々な人が異なる関心から、折り紙に興味をもっていることが想像されます。 Origami2.jpg 店頭でも、 折り紙の本と並んで、両面折り紙や、大型で折り目がついて子供でも簡単に作れる折り紙などを目にします。スイスではあっても高価な日本製の折り紙は、日本からのおみやげにスイスの子供や学校の先生にプレゼントすると大変喜ばれるアイテムの一つです。 ただし、今までやったことのない人が、いきなり本を見ながら折り紙に挑戦するのはかなり難しいことのようです。このため、折り紙の基本を手ほどきする折り紙学習講座やワークショップが、各地で開催されています。わたしもこれまで何度か折り紙ワークショップに参加したり、折り紙を教える機会があったのですが、どの回も盛況でした。仕事帰りと思われる男女が悪戦苦闘しながらも、楽しそうに小さな紙を慣れない手つきで折っていたり、子どもたちが真剣な表情で夢中になって作品を作り上げていく姿は、見慣れたスイスの光景と違って、なんだかとても新鮮で、印象的でした。 Origami3.jpg
市販の大判で折り目がついた子供用折り紙

はさみやのりを一切使わず、3次元の立体的な形を自在に作り出すことができる折り紙の構造は、単に作ったり、飾ったりして楽しむ対象としてでなく、 産業、工学、医学、教育、セラピーなど多様な分野で利用、応用できるものとしても、世界的に注目を集めています。 飛行機の機体に折り紙構造を応用すると、軽量でありながら頑丈な機体となり、機体の重量を30−40パーセント減らすことができます。一瞬で全体が広がるエアーバッグの折りたたみの技術を工夫すれば、性能は同じでもこれまでよりずっと小さいエアーバックを作ることができます。宇宙工学分野で開発が進められている、 組み立て不要で軽量の折りたたみ型の直径34メートルの大型軽量のスターシェイドが実現すれば、これまで不可能だった星の観測が可能だといいます。植物の葉や昆虫の羽など、自然界で見られる折りたたみの構造は、生物の機能を模倣・応用した技術や構造を開発するビオニーク Bionik という分野でも重要なテーマとなっています。 教育学や医学分野では、幾何学への理解や、 集中力、運動能力の向上に、折り紙が役立つとされ、2006年以来、折り紙を使った教育やセラピー方法について意見交換をする国際会議も毎年開かれています。 最後にもう一度、問題を出します。他国との対立問題を起こすこともなく、 平和裏に世界で愛好されるようになり、同時に、目下、最先端の様々な産業・学問分野で評価されたりインスピレーションの源泉となっている、日本の伝統的な文化とはなんでしょう。この記事を読んでくださった方以外は、多分答えられないのではないでしょうか。

穂鷹知美
ドイツ学術交流会(DAAD)留学生としてドイツ、ライプツィヒ大学留学。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(環境文化史)を経て、2006年から、スイス、ヴィンタートゥア市 Winterthur 在住。
詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。


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